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1.はじまりの握手

言葉には気をつけましょう。の巻

 クロスビー家で働き始めて5年がたった。仕事は楽しくてやりがいがあるし、屋敷の人たちとも仲良くしている。

 そんな私に、お見合い話が持ち上がった。トマスさんにアドバイスされたとおり、私は父に自分が共働きを希望していることを伝えたんだけど・・・・。


「エルシー、お姉さんが来てる」トマスさんがメイド控え室に顔を出した。

「え?姉がですか?」

「そう。厨房に通してあるから。」

 もしかして家族に何かあったのかも・・・私は慌てて厨房に向かう。

 厨房では姉がお茶を飲みながら、トマスさんと話をしていた。トマスさんは店の常連だというのもあるけど、私をクロスビー家に推薦したことから私の家族とも結構親しくなっていた。


「お、エルシー来たわね。元気?」

「元気?じゃないわよ。職場に来るなんて・・・・もしかして家族に何かあったの?」

「みんな元気よお。今日は・・・」

「俺、席を外そうか?」トマスさんが気をきかせて席をたとうとする。

「いいえ、トマスさん。いてください。エルシー、今日はあなたのお見合いの件で来たのよ」

「そう・・・」私は椅子に座った。

「あなたの出した条件を話したら、向こうから断ってきたわ。お父さんは気にしてないけど、お母さん、がっかりしてたわよ~」

「あ、そうなんだ。」私はちょっとほっとしていた。断られなかったどうしよ~と内心困っていたのだ。

「ねえエルシー。あなた、結婚する気あるの?」

「結婚はいずれしたいと思ってるけど、今すぐってわけじゃ・・・」

「好きな男性とか、恋人はいないの?そうしないと、またお見合い話が持ち上がるわよ。」

 そんな人、いるわけない。いたら、それを理由に断るわよ。

 黙りこんでお茶を飲んでいると、「俺だよ。俺がエルシーの恋人」と横から声がかかった。

「??」私が声の方向を向くと、トマスさんが手をあげていた。

「ええっ?トマスさんが」私が何か言う前に、姉が食いついた。

「そう。まだ、付き合い始めたばっかりなんだよな、エルシー?」

 姉はトマスさんと私を見比べると、なぜだか上機嫌になった。

「そうなの。なあんだ、そうだったの~。もー、エルシーったら。付き合い始めたばっかりで照れくさいのは分かるけど~。も~。」

「い、いや・・・あのね、お姉ちゃん・・・・」

「わかったわ。私からお母さんたちに報告しておいてあげる。そういえば、トマスさんっていくつ?」

「俺は31歳だよ。エルシーは23歳だから、8歳離れてるな。だめかな」

「そうねえ・・・お父さんは歳が離れすぎとか文句言うかも知れないけど、私は賛成よ。さて、そろそろ家も夕方の準備に入る時間だわ。トマスさん、エルシーのこと、よろしくね。エルシー、私から家の皆には話しておいてあげるからさ。じゃあね~」

 姉は、トマスさんの発言を信じてそのまま帰ってしまった・・・・


「トマスさん・・・姉が帰ってしまいました」

「そうだな」

「トマスさんのでまかせを信じてしまったじゃないですか!ああどうしよう・・・今度休暇で家に帰ったら、質問攻めじゃないですかあ・・・私たち、付き合ってもいないのに、どうすれば・・・」

「付き合えばいいじゃないか」

「そうですね・・・つきあえば・・・はあ??」

「だから、俺と付き合えばいいじゃないか。エルシー?」

 そのとき、トマスさんの口から出たのは、まるで悪魔のささやき。確かに、付き合ってしまえば家族に嘘をついているという罪悪感はなくなる。でも・・・

「でも・・・トマスさん・・・」

「エルシーは嘘をつけない性格だから、家族に嘘をつくと苦しいだろう?」

「う・・・そ、そうです。」

「俺も、両親にいろいろいわれなくなるし。お互いにトクだと思うけど?」

「トマスさんも言われているのですか・・・」

「そう。俺のほうが歳くってるから切実だよ~。」

「わかりました。ふり、でいいんですね。」

「よろしく、エルシー」

「よろしくお願いします、トマスさん」

 私たちは握手をした。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


まさにタイトルどおり「でまかせの恋人」がスタートしました。

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