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プロローグ:転機は突然に

 私の家は、王都で小さな食堂を家族経営している。小さい頃から3歳上の姉とともに店を手伝うのは当たり前で、合間に友達と遊んだり勉強したりしていた。

 学校を卒業すると、家族は皆「エルシーの好きな道に進んでいい」って言ったけど、私が当時好きだったのは、父の作った料理をお客様が美味しそうに食べる姿を見ることだった。厨房で料理を教わるのも好きだし、接客でお客様と会話をするのも好き。

「私、食堂で働くのが好き。だから、ここで働くよ」そういうと、父は「わかった。じゃあ、エルシーはうちで働くといい。給料も出そう」と言ってくれたのだった。


 ところが、人生はどう転がるかわからない。正式に食堂で働き始めてすぐ、私にクロスビー家で働くチャンスがおとずれた。

 クロスビー家といえば、王都でも憧れの職場として有名だった。給料はいいし、働く人たちの待遇も全然違うらしい。どうして「らしい」なのかというと、人の入れ替わりがあまりなく、求人がめったにないからだ。「クロスビー家で働くのは王宮で働くより難しい」と王都でも噂されているくらい。

 そして、クロスビー家といえば次期当主・デルレイ様も王都で噂の人物だ。デルレイ様はその外見と華やかな女性関係が庶民の間でも知られていて、学校の同級生で自分の容姿に自信がある子は王宮に就職してデルレイ様の目に留まってみせるとか息巻いてる子がいた。

 あの子、王宮でデルレイ様の目に留まることができたのかなあ・・・・あんまり親しくなかったけど。父がクロスビー家の執事クロードさんと家政婦ヴェラさん(ちなみにお二人はご夫婦だ)の話を聞いている隣で、ぼんやり思い出していた。


「エルシー、どうした?」父にひじでつつかれて、私ははっとした。

「ご、ごめんなさい。ちょっと驚いてしまって。申し訳ありません、クロードさん」

「いいんだよ。突然現れた人間に、いきなり働き口を紹介されたら驚くものさ」

「あの、でも、どうして私のことを知っているのですか?」

「うちの次男が、ここの常連なんだよ。トマスって言うのだが」

「トマスさん、ですか?」うーん、常連さんの顔は思い浮かぶんだけど名前は知らない人が多いから・・・・

 私が頭を捻っているのがわかったのか、ヴェラさんが「背が高く無愛想な子だから覚えてないでしょ?」と笑う。

 無愛想・背が高い・・・あ。もしかして・・・・私は一人の男の人を思い出した。その男の人は週に2~3回必ず姿を見せるんだけど、いつも料理を食べる姿勢がなんというかとても真剣な人だ。

「もしかして、鳶色の髪の毛の方でしょうか」

「あら。覚えていてくれたの?」

「はい。あの、料理を食べるときにいつもすごく真剣なので」

「まったく、あの子は・・・しょうがないわねえ。」ヴェラさんはあきれた。

「あの、トマスさんって何をしている人なんですか?」

「トマスは、クロスビー家で料理人をしているんだ。それで趣味と実益を兼ねて美味しいと評判のお店を食べ歩いているらしい。このお店でのエルシーさんの接客がとてもよかったらしくてね。

ちょうどメイドの一人が故郷に帰ることになって欠員が出たものだから、エルシーさんを推薦してきたんだよ」クロードさんが教えてくれた。


 その後、クロスビー家での労働条件を書類で見せてもらって驚いた。細かい決まりごとがたくさんあるけど、こんな条件のいい働き口は学校の求人でも見たことがない。

「クロスビー家は確かに待遇も給料も他家を上回っているかもしれませんが、その代わり求めるレベルも高いです。少数精鋭がモットーですので、仕事内容は多岐にわたりますし忙しいですよ。エルシーさん、あなたなら頑張れるとうちの料理人は判断したようですが・・・どうですか?」

 私の仕事が認められたんだもの!チャレンジするに決まってる!

 「私、頑張ります。よろしくお願いします!」私は立ち上がって、クロードさんに頭を下げた。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


お久しぶりです(そうでもないか)。

連休中に間に合うようになんとか新作をUPできました。

「魔道士~」ほど長くありませんが、お付き合いいただけると

嬉しいです。

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