正体バレ寸前
「---コメント欄、流れるの早すぎだろ」
「喉終わってる?」
「今日いつもより声低くね?」
「また徹夜かよ」
といつものように視聴者からのコメントが流れる。
「3日寝てないだけだ、問題ない!」
その時だった。
カタっと配信部屋の奥で、何かが動いた音がした。
背筋が凍った。
あの音を、俺は知っている。
忘れるはずがない。
異世界で何度も聞いた。
-”門”が開く音だ。
部屋の奥、
入り口に、
”人ではないもの”が立っていた
「……なんでスライムがここにいる」
気がついた時には
俺は立ち上がっていた。
目が覚めた瞬間、嫌な予感がした。
スマホの通知が、止まっていない。
ベッド脇に放り投げていた端末は、
画面が見えないほど通知で埋まっていた。
『@NoctRay 切り抜き』
『トレンド入り』
『1000万再生』
『神演出』
『CG技術どうなってんだこれ』
「……は?」
乾いた声が漏れる。
昨夜の記憶が、一気に蘇った。
——部屋に現れた“門”。
——キッチンに立っていた異形。
——そして。
反射的に使ってしまった、魔法。
タイムラインは祭り状態だった。
『映画より迫力ある』
『配信者でこれは天才』
『絶対案件だろ』
『編集神!』
『これ生放送なの意味わからん』
誰も、本物だと思っていない。
——当たり前だ。
現代日本で、
魔法なんて存在するはずがない。
その時、
一つのコメントで指が止まった。
『その術式、どこで覚えた?』
心臓が止まりかけた。
投稿時刻は、午前三時十一分。
アカウント名は、
《Elias_013》
——その名前を、俺は知っている。




