3話:選ばれし者の代償はあまりにも眩しすぎる
なん…だ…力が抜ける…
催眠か何かだろうか。
俺は死んだのだろうか。
体から力が抜けていく。視界が暗くなって絶望のどん底から少しの安堵と共に俺はその場に倒れた。
意識が少し楽になった。目を開けると、そこはなにも無い、あたり一面白い空間。見たところだと壁はないみたいだ。
これは‥天国なのか?
天国と地獄は実在するみたいだ。今俺がいるのだから間違いない。
「青年よ。」
背後から聞こえたヨボヨボな老人の声に俺は石のように固まった。
振り返ると少し背丈の低い老いたお爺さんが立っていた。
髪の毛は生えていなく、彫りの深い顔つきと非常に落ち着いた茶色の目の色から西洋人だとわかる。それに恐ろしいほどの威圧感を感じる。
「あの。俺は、死んだのですか?」
聞きたいことなど山程あった。ここは何処なのか。あなたは誰なのか。佐伯達は無事なのか。それに天国にWi-Fiがあるのか。
「死んだ?失礼な。お前を助けたのだぞ。」
この人は何を言っているんだ。あの空間からここヘ?
「助けた?どういうことなんだ。それにあなたは一体誰なんだ。」
老人は間髪を入れず枯れ木のような声で答えた。
「私はルター。御主を助けるために、一時的にこちらに呼び寄せたのだ。」
言っていることがわからない。どこかでこの老人は一部始終を見ていて俺をワープさせたという事なのか。
「じゃあ、ここはどこなんですか?」
「そうだな。はっきりいうとココは天国。一時的にお前をこっちに引き寄せた。時間はない。質問はこれくらいにしてくれ。」
「は、はい。」
まだ質問したい気持ちは変わらないがなんとか堪え、老人の言う通りにする。何と言ってもこの老人の放つ威圧感は尋常じゃなく、逆らったらマズイことは見て取れる。
「本題に入ろう。結論から言うと、お前は選ばれし人間だ。」
ちょっと待てちょっと待て、この16年間何も目立つこともなく平凡に暮らしてきたこの俺が?とびきり友達が多いわけでもなく運動神経も普通、勉強はなんとかやってきて10位を保っている俺が?何かの間違えだ。それか新手の詐欺。こいつもマレフィクスなんじゃないか?
「600年前の事だ。史上最悪なマレフィクスであり魔女、アラディアという女がいた.。そいつはマグスとの激戦の末、男は魔法を使えないという呪をかけて姿を消し去った。俺もマグスだったからもちろん力は持っているが使えなくなった。それから約500年、男のマグスやマレフィクスは存在しなくなり、以前より平和な時代が訪れた。しかしマレフィクスは遂に男のマレフィクスを作ることに成功したのだ。それから100年、社会は女マグスVS男マレフィクスという構図の中、犠牲を生みながらなんとか社会を作っていった。だが遂に我々にも栄光の兆しが見えたのだ。
俺はその一言に息を呑んだ。
「お前だ。600年ぶりにマグスになれる器が現れたのだ。お前は神に選ばれた。」
もうわかる。面倒くさいパターンだ。戦いはできるだけ避けたいのに、選ばれし者など絶対嫌だ。
「お前は、武術に長けている。眠れる才能があるんだ。」
そいつは凄い。そんなヒーローいたら俺も憧れるさ。ファンになってサインをねだねる。だがなりたいとは思わない。丁重にお断りする。その役を譲れるのであればもっと頼りあるやつにやらせるね。
「俺の現役時代の能力をお前にやる。十分強い。その素材を活かしてくれ。」」
料理道具と食材はやるからそれで上手い料理をなんとか作れってわけか。
「それに何と言ってもアビリティだ。一定時間自分の能力の150%を最大限まで発揮できる。
「だが、だ。お前はそのアビリティを使うごとに、
ハゲていく。」
おいおい。こいつは急展開ハゲる?何を言ってるんだ。どんな能力の代償だよ。もっと、なんか、こうあるだろ。その…うん。
「まあそういうわけだ。頑張って戦うんだな。まだあっちではまだ一秒ほどしか経っていないだろう。頑張れよ。青年。」
そう、マルティン・ルターは言い放ち、俺を現世に返した。
なんやら俺は戦わないっていう選択肢は無いみたいだな…




