4 VS 断末魔の叫び あと田舎の村でのひと時
「えっと……まだやる?」
おそるおそる尋ねてみる。
騎士はゆっくりと自らの剣を見下ろした。
刃には亀裂が入り、焼けた金属が赤く燻っている。
「……これではもう斬れん」
騎士は小さく呟き、剣を下ろした。
「騎士の名折れだが、ここは一時――」
「――っ!」
火花が散る。
私の前にハナコが割り込み、騎士の刃を受け止めていた。
「不意打ちは卑怯です」
ハナコが低く言う。
騎士が目を細める。
「いい反応だ」
私は思わず一歩退いた。
「助かった、ハナコ」
つばぜり合いの最中、騎士の剣が軋む。
次の瞬間、刃が折れた。
騎士は動きを止め、折れた剣を静かに見下ろす。
「……これまでか」
騎士は折れた剣を鞘に戻し、背を向ける。
「次は仕留める」
そう言うと、走り去っていった。
私はその場に座り込む。
「はー……」
長く息を吐く。
「助かりましたね」
短くなった髪を指でつまむと、毛先が肩甲骨のあたりで止まる。
「だいぶ減っちゃったなあ」
「似合ってるよ」
「どーも」
その日のうちに森を抜け、私たちは近くの村で休むことにした。
「聞いてよみんな!」
村の広場の真ん中でくるりと回り、赤い髪がふわりと舞った。
「三百年に一人しか生まれない赤髪の魔女、それが私!」
子供たちが「おおー!」と声を上げる。
突然の演説に、大人たちは戸惑っているようだ。
私は構わず続ける。
「魔女の髪には魔力が込められてるんだけど、赤髪は特別! 普通の魔女より、ずっと強い!」
子供が目を輝かせる。
「最強の魔女だ!」
「まあね!」
胸を張る。
「つまり――」
一拍置く。
「皆さんは、私と出会えたことを光栄に思うべきなの!」
胸をどん、と叩く。
「私こそが奇跡!!」
子供たちが歓声を上げる。
両手を大きく広げる。
「でも、そのせいで敵も多い!」
声を落とす。
「いくつもの魔女団は私を欲しがり、退魔騎士団には命を狙われる」
そしてまた調子を上げる。
「今日なんて死にかけたけど、でも私は負けない!」
腕を振り上げる。
「なぜなら私は赤髪の魔女だから!」
空を指さす。
「私の旅の目的はただ一つ! 大昔の赤髪の魔女が、アルカ遺跡に“何か”を残した!」
「宝物ー?」と子供が尋ねる。
「分からないけど、それが欲しい!」
にやりと笑う。
「どんな困難があっても諦めない! なぜなら私は赤髪の魔女、キリエだから!」
ぐるりと一回転。
子供たちは歓声を上げる。
大人たちは戸惑いながらも拍手を送った。
「あ、あと相棒を紹介するね。彼女は私の友人でハナコと言います」
「私の紹介は短いな」




