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総理大臣、中学生になる。〜悪行教育現場をぶっ壊す最強の生徒会長〜  作者: まこーぼ


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第5部:革命と再生編

第52話:生徒総会、第二の演説と再生への舵取り


 週明けの月曜日。

 私は臨時生徒総会を招集した。

 場所は再び、あの体育館。

 だが、今回の雰囲気は前回の選挙演説とはまるで違う。熱狂や興奮ではなく、困惑と不安、そして罪悪感が漂っていた。松島先生が倒れた件、そして教育委員会や政治家との対立の噂。生徒たちは、自分たちが始めた革命の行き着く先に怯えていた。

 ステージの上には、私一人。仲間たちは袖で見守っている。一ノ瀬の姿もあるが、彼女の表情はまだ硬い。


 私はマイクの前に立った。

「皆さん。今日は重要な提案があります」

 私は静かに切り出した。

「先日、松島先生が倒れました。原因は過労とストレスです。これは、紛れもなく我々が導入したランキング制度の結果です」


 会場がざわつく。「俺たちのせいかよ」「でも先生だって悪いし」「神条がやれって言ったんじゃん」という反発の声も聞こえる。


「私は問いかけたい。我々が目指したのは、教師をいじめて憂さ晴らしをする学校だったのか?

 権田先生のような暴力を振るう教師を排除したかったはずが、いつの間にか我々自身が『言葉の暴力』を振るう権田になっていないか?」


 生徒たちが黙り込む。

 図星だ。彼らは薄々気づいていた。自分たちが怪物になりかけていることに。


「権力には責任が伴います。評価する権利を持つ者は、公平で建設的な評価をする義務がある。

 『キモい』『死ね』と書くのは評価ではない。ただの罵倒だ。いじめだ。

 我々は被害者だったはずが、いつの間にか加害者になっていたのです」


 私は深呼吸をし、続けた。

「だから私は、ランキング制度の『大改正』を提案します」


 スクリーンに、新しい評価シートが映し出された。

 これまでの単純な点数評価や匿名コメント欄は廃止。

 代わりに、『良かった点』『改善してほしい点』を具体的に記述する欄が設けられている。そして、誹謗中傷コメントはAI(影山が開発したフィルター)によって自動削除され、悪質な投稿者は特定されて評価権を剥奪されるという厳格なルール。

 さらに、教師側からも生徒を評価する『逆ランキング』ではなく、『感謝のメッセージ』を送れる機能を追加する。


「これは『対話』のためのツールです。一方的に断罪するのではなく、教師と生徒が、互いにプロとして、人間として尊重し合うためのシステムです。

 甘いと言われるかもしれない。でも、私は誰も倒れない学校を作りたい。

 松島先生が復帰した時、彼女が『変わろう』と思えるような評価をしてほしい。それが、我々の勝利の証明です」


 静寂が流れた。

 生徒たちは戸惑っていた。振り上げた拳をどう下ろせばいいのか分からないのだ。

 その時。

 誰かが拍手をした。

 教職員席からだった。

 田中先生だった。彼は立ち上がり、一人で力強く拍手をしていた。

 それに続いて、3年生の西園寺が拍手をした。

 サッカー部の桐島が、「しゃあねえな、やってやるか」と照れくさそうに拍手をした。

 そして、一ノ瀬がステージに歩み寄り、私の隣に立った。彼女の目には涙が浮かんでいた。

「……おかえり、神条くん」

 彼女も拍手をした。

 それを合図に、会場全体が拍手に包まれた。

 熱狂的な歓声ではない。穏やかで、温かい、雨上がりのような拍手。

 それは、生徒たちが「暴徒」から「市民」へと成長した瞬間だった。


 総会後、私は高村からメールを受け取った。

 『教育委員会への報告完了。新制度は「生徒主体の学校改善プログラム(トライアル版)」として承認されたわ。大河内の方も、私が手を回して「まだ利用価値がある」と思わせておいた。当分は大人しくなるはずよ。……ただし、油断しないで。彼はまだ諦めていない』

 

 私は安堵の息をついた。

 これで、学校は正常化に向かう。生徒と教師の新しい関係が始まる。

 だが、大河内がこのまま引き下がるとは思えない。彼は必ず、次の一手を打ってくる。

 そして何より、私自身に残された時間は少ない。

 3年生の卒業、そして私の任期満了。

 物語は、最終章へと向かって加速していく。

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