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総理大臣、中学生になる。〜悪行教育現場をぶっ壊す最強の生徒会長〜  作者: まこーぼ


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第5部:革命と再生編

第38話:タブーの破壊と、王の玉座が揺れる時


 俺、権田剛ごんだ つよしは、この学校の絶対的な支配者だ。

 生活指導担当。柔道部顧問。

 俺の睨み一つで不良どもは縮み上がり、俺の怒声でPTAのババアどもも口をつぐむ。教育とは「指導」であり、指導とは「恐怖」だ。動物と同じで、痛みと恐怖を与えなければガキどもは言うことを聞かない。それが俺の信念だ。

 今日の生徒会長選挙も、ただの通過儀礼に過ぎない。俺たちが用意したシナリオ通り、佐藤が当選し、俺の支配は盤石なまま続くはずだった。


 だが。

 壇上に立った神条湊という2年のガキが、俺のシナリオを土足で踏み荒らし始めた。


「今日は、皆さんに『提案』があります。そして、そこに座っている先生方には『通告』があります」


 通告? ガキが教師に?

 俺は眉をひそめた。何を生意気なことを言っているんだ。あとで指導室に呼び出して、竹刀の錆にしてやる。


「この学校は、誰のものでしょうか。

 校長先生のもの? 先生方のもの? PTAのもの?

 ……いいえ。違います。断じて違う。

 ここは、我々生徒が学び、成長し、未来を作るための場所です。主役は我々です」


 神条が俺たちを指差した。

 その指先が、妙に腹立たしい。まるで汚いものを見るような目つきだ。

 俺は苛立ちを隠せずに足を組み替えた。隣の教頭が「権田先生、落ち着いて」と小声で囁くが、うるさい。


「しかし、現実はどうでしょう。

 理不尽な校則。理由のない『指導』という名の暴言。内申点を人質にした脅迫。そして……暴力による恐怖支配」


 俺の心臓がドクリと跳ねた。

 暴力。恐怖支配。

 明らかに俺のことを言っている。

 全校生徒の視線が、一瞬だけ俺の背中に突き刺さるのを感じた。

 腰を浮かせかける。

 「黙れ!」と怒鳴りたかったが、教頭に袖を引かれて思い留まった。まだだ。ここで騒げば、向こうの思う壺だ。


「先生方は、自分たちが評価されない安全圏にいるから、好き勝手ができるんです。

 ラーメン屋が不味ければ客は来なくなる。会社員が成果を出せなければクビになる。

 ですが、教師はどうですか?

 授業がつまらなくても、生徒を傷つけても、我々生徒は教室から逃げられない。

 これは独占企業の横暴と同じです。構造的な欠陥なのです」


 生徒たちが頷いている。

 なんだ、あの目は。

 いつもなら俺を恐れて下を向いている羊たちが、今は俺を睨み返している。

 神条の言葉が、あいつらに毒を注入しているのだ。「教師は偉くない」「反抗してもいい」という劇薬を。


「だから、私は提案します!

 この不健全な独占状態を打破するために、『教員評価ランキング制度』の導入を!

 生徒が教師を点数化し、ランキングとして公表する。

 逆に、暴力的な教師、授業の準備をしていない怠慢な教師、えこひいきをする教師は、数字として白日の下に晒されるべきだ!

 それこそが、真の公平性であり、民主主義ではありませんか!」


 ドッ、と会場が湧いた。

 歓声ではない。地響きのような興奮。

 教師を評価だと? ガキが大人を採点するだと?

 そんなことが許されてたまるか。教師の権威が地に落ちる。俺の王国が崩壊する。


 頭の中で何かが切れた。

 理性が吹き飛び、純粋な怒りが全身を支配した。


「貴様! 何を言っている!」

 俺は椅子を蹴飛ばして立ち上がった。

 顔が熱い。血管が切れそうだ。

「生徒の分際で、教師を評価だと!? つけあがるな! マイクを切れ! 演説中止だ! 放送部、何をしてる! 早く切れ!」


 俺の怒号が体育館に響き渡る。

 2階の調整室にいる放送部顧問が、慌てて電源を落とすのが見えた。

 ブツリ。

 音が消えた。神条の声が途切れた。


 俺は勝ち誇ったように笑った。

 ざまあみろ。所詮はマイクがなければ何もできないガキだ。力こそが正義なんだよ。

「終わりだ! 神条、降りろ! あとで指導室に来い! たっぷりと教育的指導をしてやるからな!」


 だが。

 神条は動じていなかった。

 怯えるどころか、ニヤリと不敵に笑いやがった。

 そして、懐から何かを取り出した。

 拡声器?

 キィィィン、とハウリング音が鳴る。


「止められませんよ、権田先生。マイクを切っても、私の声は消えない。もう、スイッチは入ってしまったのですから」


 なんだ? 何を言っている?

 神条がステージの袖に合図を送った。

 ウィィィン……という重低音。

 頭上で何かが動いた。

 見上げると、巨大なスクリーンがゆっくりと降りてきている。

 

 嫌な予感がした。

 背筋が凍るような、得体の知れない悪寒。

 神条の目が、俺を射抜いている。

 「ここからが地獄だぞ」と告げるような、冷酷な目で。


 スクリーンに光が投射された。

 俺の喉が渇き、足が震え始めた。

 何が映るんだ?

 まさか。

 俺の玉座が、音を立てて崩れ始めようとしていた。

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