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総理大臣、中学生になる。〜悪行教育現場をぶっ壊す最強の生徒会長〜  作者: まこーぼ


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第4部:崩壊の序曲・心理戦編

第19話:黒い封筒と死刑宣告のシナリオ(美咲・教頭視点)


【選挙管理委員長・美咲の視点】


 私は、2年C組の川上美咲かわかみ みさき。今回の生徒会長選挙で、選挙管理委員長を任されている。

 ……正直、やりたくなかった。

 だって、この学校の選挙なんて「出来レース」だから。

 昨日、教頭先生に呼び出されて言われた言葉が忘れられない。

 『川上さん、分かってるね? 佐藤くんが当選するように、開票の時に少し“工夫”をしてほしいんだ』

 工夫。つまり、神条くんへの票を無効票にしたり、佐藤くんの票に水増ししろということだ。

 大人は汚い。先生たちは、自分たちの気に入らない生徒を落とすためなら、平気で不正をする。


 放課後の生徒会室。私は一人で投票用紙の確認作業をしていた。

 ため息が出る。親友の一ノ瀬玲奈からは「正しいことをして」と言われているけれど、教頭先生に逆らったら内申点がどうなるか……。


 その時、ドアが開いた。

 入ってきたのは、神条湊くんだった。


「お疲れ様、委員長。一人で大変だね」

 彼は缶コーヒーを差し出した。

「……神条くん。ここ、立候補者は立ち入り禁止よ」

「知ってるよ。でも、君が泣きそうな顔をしているという情報が入ったからね」


 彼は近くの椅子に腰掛けた。

「教頭に脅されたんだろう? 『佐藤を勝たせろ』と」

 ドキッとした。なんで知ってるの?


「安心して。君は何も不正をしなくていい。いや、してはいけない。君の手を汚す必要はないんだ」

 神条くんは優しく言った。

「教頭先生には、僕から『説得』をしておくよ。彼が二度と、君にそんな汚い命令を出せないようにね」

「説得……?」

「ああ。大人の流儀での話し合いさ。君はただ、正々堂々と開票作業を指揮してくれればいい。それが、この学校を守ることに繋がるから」


 彼の目は真剣だった。不思議と、彼に任せておけば大丈夫だと思えた。

 神条くんが出て行った後、私は少しだけ勇気が湧いてくるのを感じた。


【教頭(田村)の視点】


 PTA会長の襲来から二日。私は生きた心地がしなかった。

 なんとか「調査中」ということでその場は凌いだが、来週の総会までには言い訳を用意しなければならない。いや、言い訳など通用しない証拠を突きつけられている。

 そんな極限状態の中、私はまだ選挙工作の指示を出さなければならなかった。校長からの厳命だ。『神条だけは絶対に当選させるな。あいつが生徒会長になったら、我々の不正が全て暴かれるぞ』と。

 もう手遅れな気もするが、最後の足掻きをするしかない。


 金曜日の早朝。まだ誰もいない職員室。

 重い足取りで自分のデスクに向かうと、そこに見慣れない物が置かれていた。

 真っ黒な封筒。差出人の名前はない。

 嫌な予感がした。手が震える。

 封を開けると、中から一枚のUSBメモリと、数枚の紙が出てきた。

 紙を見た瞬間、私は声を上げそうになり、慌てて口を押さえた。


 『タカハシスポーツ店・裏帳簿コピー(原本)』

 『店主・高橋の自白音声データ書き起こし』

 『教頭・田村による選挙管理委員への不正指示に関する録音データ(川上美咲への強要)』


 ……終わった。

 全て知られている。横領だけでなく、昨日の選挙工作の指示まで。

 そして、最後に一枚のメモが入っていた。手書きの、整った文字で。


 『選挙結果を操作すれば、このデータ一式が県警捜査二課、マスコミ、そしてPTA会長の自宅に即座に届く手はずになっています。

 正しい選択を祈ります。

 追伸:公正な選挙が行われた場合のみ、このデータは一時的に封印します。貴方の退職金を守るための、最後のチャンスです』


 これは「取引」だ。

 神条だ。あいつがこれを置いたんだ。

 私は椅子に崩れ落ちた。全身から冷や汗が噴き出す。

 逆らえない。もし不正をして佐藤を勝たせても、その瞬間に私は社会的に抹殺される。逆に、神条を勝たせれば、少なくとも今は警察沙汰を回避できるかもしれない。

 校長の命令? 知ったことか! 私の人生の方が大事だ!


 私は震える手で内線電話を取り、選挙管理委員会顧問の教師を呼び出した。

「……あー、もしもし。田村だ。……昨日の件だが、中止だ。……ああ、そうだ。開票作業は厳正に行え。一切の手心を加えるな。……いいか、絶対に不正をするなよ! もし何かあれば、私が許さんぞ!」


 電話を切った後、私は机に突っ伏した。

 完全に敗北した。

 一介の中学生に、我々大人が、手玉に取られたのだ。

 窓の外では、朝日が昇り始めていた。それは私にとって、処刑台へのカウントダウンの光にしか見えなかった。

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