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総理大臣、中学生になる。〜悪行教育現場をぶっ壊す最強の生徒会長〜  作者: まこーぼ


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第4部:崩壊の序曲・心理戦編

第18話:PTA会長の襲来と崩壊する防波堤(権藤・教頭視点)


【権藤サユリの視点】


 私は、地元の建設会社社長の妻であり、この中学校のPTA会長を務める権藤サユリだ。

 私の信条は「規律」と「筋を通すこと」。子供たちの教育環境を守るためなら、時には鬼にもなる。だからこそ、学校側の要望にもできる限り協力してきたつもりだ。バザーの売上、廃品回収の収益、そして保護者から集めた会費。これらは全て、子供たちのために使われるべき聖なる金だ。


 だが、あの中学生――神条くんから渡された調査報告書を見た時、私の血管の中で何かが沸騰する音が聞こえた。

 『PTA会費使途不明金に関する調査報告書』

 そこには、私たちが汗水垂らして集めた金が、教頭や一部の教師たちの飲み代、あるいは私的なゴルフ用品の購入費に流用されている証拠が、領収書のコピーと共に突きつけられていた。


「舐めるんじゃないわよ……!」


 私は愛車のベンツを学校の正面玄関に横付けした。エンジンを切るのも惜しい。怒りが私を突き動かしている。

 助手席には、PTAの副会長と会計担当の母親たち。彼女たちも同じ怒りを共有している。

 私たちはヒールの音を響かせ、正面玄関を突破した。事務員が慌てて立ち上がるが、無視だ。

 目指すは職員室。この学校の中枢であり、腐敗の温床。


 バンッ!

 私は職員室の重いドアを両手で押し開けた。

 静かだった室内が一瞬で凍りつく。教師たちが驚いた顔でこちらを見る。その中に、私の親戚である生活指導の権田もいたが、彼は私と目が合うなり、慌てて視線を逸らした。やましいことがある証拠だ。


「校長はどこ! 教頭は! 今すぐ出てらっしゃい!」


 私の怒声が響き渡る。

 奥の校長室から、禿げ上がった頭の校長と、小太りの教頭が飛び出してきた。二人とも顔色が悪い。


「こ、これは権藤会長。突然のご来校、どうされましたか? 事前にご連絡をいただければ……」

 校長が揉み手で近づいてくる。その卑屈な笑みが、さらに私の神経を逆撫でする。


「連絡? 笑わせないでちょうだい! 泥棒に訪問の予約を入れる馬鹿がどこにいるのよ!」

 私はハンドバッグから調査報告書を掴み出し、教頭の胸元に叩きつけた。

 バサリ、と書類が散らばる。


「これは何なのよ! 説明なさい!」

 私が指差したのは、マーカーで強調された数字の羅列だ。

「PTA会計の『雑費』と、スポーツ店の裏帳簿の金額が一致してるわよね? 30万円! 私たちが子供たちのために集めたお金を、自分たちの小遣いにしてたってこと!?」


【教頭(田村)の視点】


 心臓が止まるかと思った。

 目の前に散らばった書類。そこに見えたのは、見覚えのある数字と、私が確かにあのスポーツ店で受け取った領収書のコピーだった。

 なぜだ? なぜこれがここにある?

 あの店のオヤジは口が堅いはずだ。「絶対にバレませんよ」と笑っていたじゃないか。


「ご、誤解です! 会長、それは……会計上の記載ミスで……」

 私は必死に声を絞り出した。喉がカラカラで、声が裏返る。

 しかし、権藤会長の目は完全に据わっていた。


「黙りなさい! 記載ミスで30万円も消えるわけないでしょ! ここに証拠があるのよ! 高橋スポーツ店の店主の証言メモまであるじゃない!」


 高橋……! あの裏切り者め!

 膝から力が抜けた。ガクガクと震えが止まらない。

 周囲の視線が痛い。同僚の教師たちが、私を軽蔑と疑いの目で見ている。「まさか教頭が」「俺たちの金も抜いてたんじゃないか」という囁き声が幻聴のように聞こえる。

 特に、校長の冷ややかな視線が突き刺さる。彼は知らなかったフリをして、全ての責任を私に押し付ける気だ。トカゲの尻尾切り。


「か、会長、落ち着いてください。場所を変えて……ここでは生徒たちの耳にも……」

 私は最後の望みをかけて懇願した。応接室に行けば、土下座でも何でもして懐柔できるかもしれない。


「結構よ! ここで説明しなさい! 全職員の前で! あんたたちがコソコソ隠してきた恥部を、全部晒しなさいよ!」

 権藤会長は一歩も引かない。


「もし今すぐ納得のいく説明がなければ、来週の臨時PTA総会でこの事実を全保護者に公表します。そして、教育委員会と警察に告発状を出しますからね! 業務上横領罪よ! あんたたちの退職金、全部吐き出させて、刑務所にぶち込んでやるわ!」


 刑務所。退職金没収。

 私の人生が終わる音が聞こえた。

 目の前が真っ暗になり、その場に崩れ落ちそうになった時、視界の隅に一人の生徒の姿が映った。

 廊下の窓からこちらを覗いている、神条湊。

 彼は無表情で、ただ静かにこの地獄絵図を眺めていた。そして、私と目が合うと、口元だけで微かに笑ったように見えた。


 まさか。

 あいつか? あいつが仕組んだのか?

 一介の中学生が、PTA会長を動かし、私を破滅させたというのか?

 恐怖。純粋な恐怖が私を支配した。あれは子供ではない。悪魔だ。

 私はもう、選挙のことなど考えられなかった。自分の身を守ることで頭がいっぱいになり、思考が停止した。

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