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恋
ほわほわ。
香りが、静かに足元をすり抜ける。
今度は、少し甘くて、柔らかな花の匂い。
それがあたいを包み込む。
あたいはその香りに引き寄せられて、ただ漂う。
どこか遠くで、誰かの声が微かに響く。
でも、あたいには触れることができない。
ただその匂いだけが、あたいの心を揺さぶる。
ほわほわ、空気に溶けていく。
その香りを抱きしめながら、漂い続ける。
ふわりと、風に乗って。
あたいの存在が、少しずつ消えていくけれど、
あの香りだけは、胸の中で深く広がり続ける。
今はそれだけでいい。
追いかけることができなくても、感じていられれば、それがあたいの幸せ。
ほわほわ。
その香りがまた、どこか遠くに漂う。
あたいは、またそれを追う。
匂いに恋している限り、
あたいはずっと漂い続ける。