3/15
片思い
ほわほわ、ふわりと。
香りが少しずつ変わって、あたいを揺らす。
今度は湿った土の匂い。
その匂い、どこか懐かしくて、心の奥で揺れるものがある。
あたいは、もうすぐあの匂いにたどり着ける気がする。
だけど、すぐに消えていく。
消えないでほしい、と思う。そうすれば、ずっと感じていられるから。
ほわほわ。
風にのって、またあの匂いが近づく。
ふっと、手を伸ばしても届かない。
あたいはただ、流れの中にいるだけ。
でも、それがいい。
あたいの中で香りが、ただ溶け合う。ひとしずくのように。
あたいは何度も、その匂いを追いかける。
どこか遠く、また香りが流れ込む。
あたいはそれを吸い込んで、またほわほわと漂う。
香りを追うこと。それがあたいのすべて。
出会えないとしても、感じられればそれでいい。
ほわほわ、心がふわりと舞うように。
香りがあたいを呼び、あたいはその呼び声に答える。
次の風が来るまで。
また漂う、どこまでも。
