手を握って…。 vol.009 わずかに緊張した面持ちで…。
そう言いながら、ちらりと傍のデスクの夕美子の顔を見て瑞樹、
「こちら、今度、小宮節子編集デスクの後継となる新しい編集デスク。矢萩健之さん。小宮と交代後も、是非、よしなに~。」
健之、
「矢萩健之と申します。よろしくお願いします。」
それぞれを見回しながら一礼。
瑞樹、
「こちらが、ブリリアント編集長の與門煌さん。」
與門の顔を見て健之、
「よろしくお願いします。」
にっこりと微笑む與門、
「與門です。よろしく。」
「そして、こちらが、矢萩さんと同じく、編集デスクの新條夕美子さん。」
健之、
「よろしく。矢萩です。」
夕美子に向かって、ニッコリと…。
夕美子、わずかに緊張した面持ちで、
「…よ、よろしく…。新條…です。」
瑞樹、
「そして~~。今、席を外している人たちもいるけど…。…こちらが…。」
それぞれの名前で矢萩に紹介する瑞樹。
そして…、
「與門…、牧田さん…、好調じゃない…。それじゃ。失礼します。」
與門、
「恐れ入ります。お互いに…、よろしく~~。」
瑞樹、
「えぇ~~。では…。」
そして立ち去る前に、節子、夕美子としっかりと握手して、椅子に座ったままの夕美子を両腕で抱き締める。
「じゃね、夕美子。」
少し、掠れた声で。
「うん。あんたも頑張って。大変だろうけど。…ありがとね。」
夕美子。
元々夕美子と節子は大学時代からの同期である。
大学卒業後に同じ出版社に勤務したが、思うように実力を発揮できずに、
先輩でもある與門煌から誘いを受け、「桜華」の立ち上げから参加したのであった。
ドアの向こうに消えていく3人。静まり返る編集局。
心、
「ひゅ~~。イケ…メン。」
「…って、心~。あんたの口から…。かかか…。」
真奈香。
「彼氏に言いつけちゃうよ~~。」
亜季。
「んもぅ~~。亜紀さ~ん。」
心。
亜季、
「かかか…、冗談冗談。…それに…しても…。た~いへんだ~~。」
口を一文字にして亜季、流し目で夕美子を見る。
真奈香、
「あっ。」
「……。」
夕美子、メンバーの視線を集めて、目をキョロキョロと…。
「な…、なに…???何よ。その目は~~。」
「唯一の~~。彼氏…いない歴~~更新中~~。」
そんな亜季の言葉に、
「はぁ~~あ!!!!」
そう言いながら、メンバーを睨む夕美子。
その目に、一気に自分の仕事に集中するメンバー。
窓際の自分の席で與門、
「くくく。」