手を握って…。 vol.085 「お・う・え・ん…しようか…なって…。」
健之の隣にちょこんと座って杏美。
健之、
「…ん…???どしたの…???」
コーヒーを飲みながら健之。
そんな健之の顔を見ながら杏美、
「ん~~???ちょっとね~。ふふ…。」
「何…、なになに…、どしたの~???」
「デスクの…こと…。お・う・え・ん…しようか…なって、思ってね~~。」
その言葉に健之、
「はっ…???応援…???」
目をパチクリと、そして顔を捻じ曲げて、
「な…ん…の…、応援…???」
そんな健之の顔に杏美、すぐに椅子から立ち上がり、
「んんん、私が勝手に思ってる事だから~~。じゃ。」
その場を離れる杏美に健之、
「ん~~???…はて…???」
「OK.OK~。さすがは與門~~。いい感じじゃ~ん。」
出張先の長崎からの與門からの連絡と報告である。
電話口で夕美子、パソコンの画面を見ながら、
「このまま…校正に良いよね、これ…???」
スマホで與門、
「うん、お願い。今回もまた、スタッフに恵まれたわ。いい感じで進んでる~。」
「おぅ。んじゃ明日の帰り、待ってる。」
その夕美子の声に、
「わわわわ。編集長~あれ~~。」
いきなり左斜め向かいで亜季。
「何よ、あれっ…???」
電話の向こう與門、
「なに…???どうかした~???」
亜季、夕美子から電話を取って、
「お疲れ様で~す。あれ。あれあれあれ。長崎で有名なあれ…。チーズケーキ~。」
夕美子、
「チーズケーキ…???」
電話の向こうでも、
「チーズケーキ…???」
與門。
その声に反応した亜季の向かい側の席の真奈香、
「長崎で有名なチーズケーキと言えば~あれでしょ。フォンダン…。」
そこまで言ってパチンと夕美子、フィンガースナップ。
そして真奈香と同時に、
「フォンダンフロマージュ。」
亜季、
「それそれ~。編集長~~。」
電話口で…。
声のない受話器。
「編集長~。ねね、編集…。もしもし。もしもし。ねぇ~。」
「…っていうか…。多分…これ…でしょ。その…フォン…何とか…。もう…持ってるけど…。袋の中に、戴きもので戴いちゃってる~わははは。クライアントから…だけどね~。」
亜季、
「うわお。や~り~~。待ってま~す。」
受話器に手を当てて、
「クライアントから戴いちゃったって~~。」
夕美子と真奈香に。
夕美子と真奈香、唇を尖らせて、
「わお。」
その時、いきなり真奈香の後ろから、
「うそ!!!なんで!!!うそでしょ。」
スマホに大きな声で…。心である。
夕美子、
「心、どうした???」
既に與門からの電話を切っている亜季。
夕美子の机の電話機に置いて、
「心…。」
通話を切って心、ガックリとして机に前のめり。
小さな声で、
「何でよ、今になって…。どうしよ…。」