手を握って…。 vol.084 変顔で何とか誤魔化そうとする健之。
健之、
「…あぁ…、これ…???…いや…、その…。昨夜、ひょんな事で、酔っ払いを助けてさ。その時、その酔っ払いから殴られちゃって…。」
変顔で何とか誤魔化そうとする健之。
何故か目をパチクリと、そして頭を左に傾ける五月。
ランダムの位置の若と杏美。杏美は何とか取り繕うが、
若は堪え切れずに口元を手の甲で押さえクスクスと…。
それを若の隣の美崎が、
「…ん…???若…、何そんな笑ってんの…???」
と、不思議そうに…。
若、
「あ…、いえ。すみません。」
何故か健之の口の傷が気になる五月。
「…腫れは…、ない…んだけど…。何だか…痛そう。」
そんな五月に、
「あぁ…。いや。もう…、全く痛みは、なくって。大丈夫です。はい。」
そんな健之を見て瑞樹、
「災難だったわね~、矢萩さん。折角助けて、逆に、何かの反動で殴られて~~。」
健之、
「えぇ…。はは…。」
何故か頭を掻きながら照れる健之を見て、とうとう杏美も、
「ぷっ。」
隣に座っている美崎、
「杏美さん…???」
杏美、
「あっ、いや…、ごめん。…じゃ…編集長。」
「うん、そうね。…もぅ~走り始めてもいるんだけど…。奈賀~。頼むね~、スープル。また新しいの、リリースするって話だったから…。」
奈賀、
「はい。」
「そして~~。ヒットだよね~これ~。」
10数枚の企画書から2枚を取り出して、
「五月~~、これ…動くよ~~。そして…、亮ちゃん。面白い事…、考えたよね~~。」
五月、左手を握って、
「はい。」
亮輔、
「ッシャ~~。」
唇を尖らせてその企画書のコピーを指で弾く。
「あ~~、それと五月~。若…、その企画に付けてくれる~~。若にはいい勉強になるのよ。お願い出来る~???」
その瑞樹の声に若、
「へっ…???良いんですか…編集長~???」
「モチ。五月お姉さまから、教えてもらいなさ~い。」
そんな瑞樹に若、喜んで、
「はい。」
五月も笑顔で若に右人差し指を数回向ける。にこにこしながら。
「おいで~若~。」
若、にっこりと、そしてコクリと五月にお辞儀して、
「お願いします。」
「うん。」
編集会議を終えて、ひとりで休憩ラウンジでコーヒーを飲んでいる健之。
「デスク~~。」
杏美。
「…ん…???あぁ~杏美さん…。」
健之。
「昨夜は…ははは。」
「ここ…。」
自分の口の左端に指を当てて。
「あぁ…。もう…大丈夫。」
「ふん。良かった~。ふふ…。ねね、デスク~。」
「…ん…???」




