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手を握って…。 vol.083 「はぁ~あ…???何その怪我…???」

テーブルの上の弁当の横にあるメモを見て健之。

「母さんの検査の結果が出るから早く出掛けます。怪我…早く治せ。会社行ったら注目されるぞ。」

それを読んで唇を捩じる健之。

「しゃあ…ねぇだろ…。なっちまったもんは~~。」


瑠唯子の作った朝食を食べて、着替えながらも鏡を見ながら、

「ん~~。何かは…言われる…かな…。」

そんな感じで見ながらも、

「でも…まぁ…、腫れも引いてるし…。なんとか…。…なるように…なるかぁ~あ~~。」



昨夜の事。

帰宅してリビングに入った健之に、テーブルに座りながら体を捻り.瑠唯子、

「おっかえり~~。」

と、言った後に、

「はぁ~あ…???何その怪我…???どうしたのよ…???喧嘩~~???」


「た…だ…いま…。ん~~???いや…。喧嘩はしてないぞっと。」

「んじゃ、何よ。あんたがパンチ食らうって、どういう事…???」


「いや…。まぁ…。そういう…。」

「はぁ~~あ???」


「実…は~~。」

「何よ、何々、何よ。どうしたのよ???」


「いやいや…。…そんなに興奮する事じゃないから…。あのね。」

両手を広げて、そして人差し指を口に。


帰宅する前の出来事を瑠唯子に話して聞かせる健之。


「へぇ~~。ふ~~ん。…そういう事か。ふん、ふんふん。あんたがね~~。」

「そういう事で…。…って、なんだよ、その曖昧なリアクションは~~???」


「いや…。別に~~。さぞ、その女性編集デスク、喜んだ事でしょう。…んじゃ、私は明日、早いから先に寝るわ。食べ終わったら、流しに入れといて~。じゃね~~。おやすみ~~。」



そして…。


出社して編集局のドアを開け…、

「しめた。まだ誰も来ていない。」


注目される。…その逆手を取った健之。

出社して来た編集者からは意外と健之の顔は、

その左半分が見えにくい角度になっている。

その為、何とか午前中は、傷も隠し通す事が出来た。

当然、知っているはずの杏美と若も、一切その事に触れる事なく…。


但し、これが…午後の…、編集者全員参加の編集会議ともなると、

周知の事実となる。


健之の左隣に座った五月が、

「…ん…???デスク…???」

と、言いながら、健之の顔を見て自分の口の左端に指先を…。


そして、その素振りが編集者全員の視線の的となる。


健之…。





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