手を握って…。 vol.055 「あんときの煌の目ぁ~~。忘れらんねぇなぁ~~。」
「まぁ…、しかし…。あんときの煌の目ぁ~~。忘れらんねぇなぁ~~。」
洋造。
「やっと、思い通りの仕事が出来る。そんな目ぇ…してた。はは。隣に藤間もいてよ。ふたりして、一回り…違うんだぜ、歳が…。」
「えっ…???洋造さんって、ウチの社長…???」
健之。
「あぁ~~。ここの常連さんだった。今じゃ…。なぁ…。けど…、しょっちゅうここに来て、煌と一緒にファッションの事、話してたよ。作りたいもんが、作れなかった時代だった。何とか今の状況、抜け出したいってな~~。当然、起業も考えてた。」
面々、沈黙。
「そんな時に、そこのビルが…空いちまってな。」
「この辺って、結構…立地も…良いですもんね~~。」
健之。
「あぁ…。お蔭様で…お店…開けさせておりやす。へぃ。」
健之に腰を下げて両手をすりすりと…、洋造。
夕美子、
「おぃ。」
洋造、夕美子をへの字で睨みながら…。
可笑しさを隠しながらフライパンで料理を作っている和弘、くすくすと、
「おっかし…。」
「おじちゃん、お願い、あのビル、私と純に。…って、泣きながら頼むんだ。藤間も…目ぇ、真赤にさせてな。」
「…で、マスター。」
康太。
「ばかやろう、康太。女ふたりに泣きながら頼まれてんだぞ。そんでひとりはてめえの姪っ子だぞ。」
「かかか。…当然、断れる訳は…ないよね~~。」
亜季。
「それからだ。こっちも…ずっと前から、やりたい仕事が出来ないって、俺に何だかんだ喋くってた夕美子と…。一緒にやろうって煌…、夕美を誘ってよぉ。かかか。てめえの後輩だ。相棒が出来たって、にこにこしてよ~。それにこいつの目も、あんときの煌の目とそっくりでな。」
夕美子の顔を顎でくぃっと。
「いやいや。こいつって事はないでしょ。」
夕美子。
「ば~か。それだけ煌とおめぇは、目に入れても痛くないってことだろ。」
その声に夕美子、
「まぁ…ねぇ~。けけ…、おじちゃんからは…可愛がってもらってばっかだから…。」
すこし間を置いて…。
「おじちゃん、子供いないからねぇ…。」
健之、
「えっ…。」
「あぁ。親はもう天に召され。女房との間には、子供は出来ず。…そんな女房も…。また…天に召され…。残ってるのが…。妹と、その娘…、煌…だけだ。」
「マスターの奥さんって…???」
健之。
「肺炎患って…、逝っちまった。」
「これは、これは…。失礼な事を…。」
「けど、今ぁ…。ほれ。こいつらがいる。」
亜季、
「私たちも…、こいつら~~。ねぇ~康太~~。」
そんな亜季を左に見て康太、
「かかか。いや…、でも、僕の場合は、マスター、おじいちゃんみたいですから…。」
「なぁ~康太~、孫だぜ、ま~ご。」
康太、にこにこしながら、
「はい。」




