手を握って…。 vol.051 自然にひとつ席を外して…。
ベルモンドのドアを押して康太と一緒に中に入る夕美子、途端に、
「へっ…???」
洋造、入口の夕美子と康太を見て、
「おぅ~来たか。」
夕美子、目の前に飛び込んで来た光景に、
「こ・ん・ば・んは~~。」
カウンターの椅子に座っているふたりの姿…。
自然にひとつ席を外して、
「いらっしゃって…ましたか…。」
「こんばんは。はは…、ほんの5分前に…。」
の声。左側の椅子ひとつ置いて納まる夕美子に健之。
料理を作っている和弘、
「洋造さんが與門さんに電話して、ほんの数分後にいらっしゃいました。矢萩さん。そして…。」
「お疲れ様で~す。」
にっこりと若。
「デスク、無理やり引っ張って来ちゃいました~。」
夕美子、
「あ…。ははは…はは…。」
洋造、
「…って~訳でな。ん…まぁ~。俺にとっちゃあ、どっちかっつぅと…。好都合か…。はは。」
夕美子、健之、
「はい…???」
康太、
「何の話…???」
「康太、親分に何か奢ってもらえ。けけけ。」
康太、洋造ににっこりと。
「実は…。」
洋造、カウンターの中の棚の引き出しに手を伸ばし、
「これ…なんだが…。」
一枚の名刺を夕美子と健之の真ん中に差し出して。
「つぅか~~。おま、夕美子、ふんふん。」
右手を横に振る。
夕美子、
「へっ…???」
「知らねぇ同士じゃあるめいし…。何で椅子ひとつ置いてんだい。おら…。」
そんな洋造の声を聞いてニッコリと和弘、ササッとお皿に料理を盛り付けて、
洋造の後ろを通って、
「はい、若ちゃん。レディーファースト。」
若、
「わぁ~、ありがとうございま~す。」
夕美子、
「はっ…???あ…、いや。」
渋々と健之の隣に落ち着く夕美子。
康太、
「わお。」
「あんたはうるさい。決まったの~食べる物~???」
そして、その名刺を右手で…、
「麻布セントラル・ムード・レディース部門チーフディレクター。茂木由香里…。」
夕美子、頭を傾げて。
そのまま自然に健之に。
「…で、マスター、この…茂木さんが…???」
健之。
「ん~~。やっぱり…ふたりとも…、知ら…ねぇか…。かかか。ワコウ~。」
洋造。
「はい。その前に~。はい、矢萩さん。」
和弘、矢萩のメニューを。
「へっ…???矢萩さん…小食~~。おやおや。」
びっくり顔の夕美子。
「すみませんねぇ~。帰るとしっかりと飯の準備…出来てるものですから…。」
そんな健之の声に夕美子、
「へぇ~~。おやおや…。」
が、
「はい…???」




