手を握って…。 vol.046 「本当に…誰も…いないの…???」
編集会議の終わり。
次々と部屋を出て行く編集者。
「さて、行くよ~若~。」
奈賀。
「はい。お願いします。」
奈賀の後を追うように部屋を出て行く若。瑞樹に笑顔で…。瑞樹も笑顔で…。
瑞樹、
「さすがに矢萩さん。仕事早いね~。」
健之、
「えへぇ~~。そうですか~。」
「ん~~。それに、周りの心、掴むのも上手~~。」
「そんな事ないですよ~~。おだてないで下さい、編集長~。」
「いやいや。おだててなんて…とんでもない。ただ…こういう人に、どうして…、いないのかな~って、思ってね~。」
「はい…???」
照れながら健之。
「本当に…誰も…いないの…???ふっしぎ~~。」
「いやいや…。はい。全く…無縁で…。ははは。」
けれどもその時、チラリと頭に浮かんだひとりの顔。
「ふ~~ん。…でも…ちょいと、視線は…感じるでしょ。」
そんな瑞樹に健之、
「はぁ…???」
「まっ、うちにもまだ…未婚者は、若干…2名…おりますから…。」
健之、目をキョロキョロさせて…、
「えっ…???そう…でし…たっけ…???ははは。」
「もぅ~~。と~ぼけちゃって…。」
そう言って瑞樹、
「…ん…???…と、言う事は、その…とぼけよう…は…。もしかして…、矢萩さ~ん…???」
健之、
「えっ…???…はっ…???」
そして両手の平をひらひらとさせて、
「いやいやいやいやいや。とんでもない。本当に…全く…。はい。もぅ~~、勘弁して下さいよ~編集長。」
「ふふ…。冗談よ、冗談。…でも、もしかすると…、向こうから、来るかも…。その時は…お願いね~。」
「あ、あ~~……。んん。はぁ…???」
「万が一、悩みがあるときは…、お手伝い、しますわよ~~。こう見えても…、一回…失敗してるからね~~。」
その瑞樹の声に、いきなり健之、
「ぶっ。編集長~。今…それ…言います~~???」
「いや。だって…、隠しておいたって仕方ないでしょ。」
「ま…。それは…そうですけど…。」
ここで言う瑞樹、過去に一度、結婚に失敗して離婚をしている。
つまり再婚者である。元夫は金融関係に勤務していたのだが、
いつしか大手保険会社の女性外交員と関係を持つようになっていた。
つまりは女性の方からの枕営業に発展したのだった。
その事が発覚して、瑞樹は離婚を決意。
ひとり娘の朱莉を伴い元夫の傍を離れたのである。
その後、2年を経て今の夫、蜷川結城と巡り会い再婚している。




