手を握って…。 vol.044 「私もバッカだよね~~。」
自分のデスクで資料を見ている健之。
片や、余り編集者がいなくなったところを見計らって若。
自分の席を離れて健之の席に、ペコリとお辞儀をして喋り出そう、
その時、健之の机の電話が鳴る。
若に右手の平を差し出し、受話器を取り、
「もしもし。ソフィアの矢萩です。…おおぅ~はい。お疲れ様~。どしたの…???」
電話の相手は久喜忍。ソフィアの編集者である。
「あっ、デスク。お疲れ様です。忍です~。今…周りに…誰かいます~???」
そんな忍の声に健之、
「え~~っと…。」
辺りを見回すと、チラリと頭だけ見えるのが、静元五月と、
背中だけ見える椿亮輔。
…と、そんな五月は、今、訪ねてきた来客に立ち上がり、その来客と共に。
そして亮輔は電話で長く掛かる様子。
健之、
「あ~~。今…、ちょっと~~。」
電話の向こう、忍、
「そっか~。」
「どしたの…???」
「私の机の引き出しに資料の入った封筒があるんですけど…。」
「机に…封筒…???」
「えぇ…。」
「実は…、間違えて持ってきちゃって…。」
健之、
「ふん。あ、ちょっと待って、若ちゃん。」
若、
「あっ、はい。」
その声を電話の向こうで聞き、忍、
「わっほ。若、いるんだ~~。すみません、若と代わって…。」
「おぅ。分かった。若ちゃん、2番久喜さん。」
若、
「あっ、はい。」
そして電話に出る若。
後ろを振り向いて、そして忍の机の引き出しを引いて、受話器に、
「はい。ありました。……えぇ。…はい。」
そして腕時計を見て、
「…多分…。大丈夫…か…な…???」
現場で忍、
「お願い若。谷崎さん、待たせてる。私もバッカだよね~~。肝心要のヤツ、間違えちゃった~。」
若、
「はい。分かりました。これから出ます。」
「うん。お願い。ふぅ~~。若がいて助かった~。」
若、健之に向かって、
「デスク。これ、忍さんに届けてきます。」
封筒を持って。
健之、
「場所は…???」
「大丈夫です。メモしましたから。」
「おぅ。じゃ、頼む。」
女性雑誌「Sophia」編集局。
編集長の蜷川瑞樹以下、編集デスクの矢萩健之、そして今の大槻若。
その他にも、今現場から電話があった久喜忍の他に、来客中の静元五月。
まだ電話中の椿亮輔。他に葛西杏美、
吉田奈賀そして柿本美崎が在籍している。
ドアでバッタリ瑞樹と。
「あら、若…???」
「忍さんから頼まれて。行ってきます。」
「ふん。若、気を付けて。」
若ににっこりと。
若、
「はい。」




