手を握って…。 vol.040 「い~つでもおいで~~。」
「もぅ~~~。」
今度はさっきより強く、健之の左肩を叩く心。
「かかかか。」
そして、
「はぁ~~。私も涙出て来ちゃった~。」
と…。夕美子。
そして夕美子の方を見る心…。
夕美子、顔を下に、体を震わせて、そしていきなり顔を上げて、涙目になりながら、
「きゃっはははは。はぁ~~。何なのよ、今の…。あぁ~~。おっかしい。」
そんな夕美子の顔を見て和弘、
「ははは。新條さん…、はい。おしぼり…。」
「あっ。ごめんなさい。じゃ…、使わせてもらおぅっか…。はぁ~~。な~んか…、久し振りに、こんなに笑った~~。可笑し過ぎるよ、矢萩さん。」
和弘、
「凄いですよね、矢萩さん。まさか…、そんなキャラ…お持ちとは…。ほんとうに可笑しいです。」
「おいらも…負けちゃあ~らんねぇなぁ~~。」
歌舞伎の助六を変顔したように洋造。
「ダメダメ。もぅ~止めて。ひぇ~~。もぅ~!!!矢萩デスクッ!!!」
そしてまたまた健之の左肩をペンと叩く心。
健之、
「あた。かかかか。もぅ…これで何度目…???雪さん。」
「きゃきゃきゃきゃ。」
笑いが止まらない若。
「いや。君は笑いすぎだろ、若ちゃん。くくく。」
若の顔を見て健之。
両目の下をハンカチで押さえて若、
「…だって…。はぁ~~。」
そんな若を見てにっこりと健之。
「はぁ~~。何だか、何相談するのか、忘れちゃった。けへ。」
「ん~~???なんか…相談事…あったんだ…若ちゃん…???」
心。
そんな心の声に、
「ん~~。…でも、もう…良いです。な~んだか、気持ち、楽になっちゃった。ふふ…。」
洋造、
「ほぅ~~。」
「いつもの店だと、こんな事、まず…ないですから…。」
畏まりながら若。
「い~つでもおいで~~。そりゃ、仕事で大変で、辛い時なんて、いっぱいあると思うよ。先輩に叱られたりね~。」
ワインを飲みながら夕美子。
「ある意味、どっかに捌け口ないと、やってられないと思う、この業界。ううん。多分、他の仕事も同じだと思うけど…。私だってあるんだから…。」
そんな夕美子の話に若、
「えっ。新條デスクにも…。」
「そりゃ~あるわよ。人間だもの。でも、私には與門がいる。そして亜季もいれば、真奈香もいる。そして…。」
心の頭を撫でて、
「こいつもいれば、美紅もいる。それに、康太もいれば信玄もいる。支えられてるよ、いっつも。…そして。」
若、
「そして…???」
「そして…、目の前にいるでしょ。笑いの殿堂が…。」
洋造を指差して、
「もし…いなかったら…。」
若、
「もし…いなかったら…???」
「重版出来なんて…、無理無理。」