手を握って…。 vol.037 「言っちまいな。若ちゃん。この際。」
「実は…、今まで僕がいたところって…。確かに読者を大切にはしてました。けれども、どうしても、売れる雑誌を作る。だから…ある意味では、組織のための雑誌作りが…方針で…。」
壁に飾られてある様々なボトルを見ながら健之。
「僕のやりたい仕事が…、出来なかったから…なんです。」
そんな健之の声に洋造、
「ほぅ~~。」
「そんな時に、声を掛けてくれたのが、桜華の取締役の、乾さん。」
その健之の話しに思わず夕美子、
「へっ!!!」
そして、
「ふ~~ん。…そうなんだ~~。」
心、
「取締役の乾…さんて…。乾…憲次…さん…???デスク~???」
夕美子の顔を見て…。
夕美子、
「うん。…でっしょうね~。取締役に乾って、ひとりしかいないし…。」
若、
「へぇ~~。そうだったんだ~~。なるほど…。だからか…。何だか、分かるような気がする~~。」
「へっ…???なんで…。若ちゃん…???」
心。
そんな心からの振りに若。
「あっ。いえ…。」
少し気まずくなりながら若。
洋造、
「くく…。言っちまいな。若ちゃん。この際。」
「へっ…。おじちゃん…、知ってんの…???」
心。
健之も、
「……。」
「ん~~。商売柄。いろ~んな話が…。聞こえてくるもんなんだよ。ほぃ、矢萩さん…、生…お代わりどうぞ~。」
健之、
「ありがとうございます。」
「実は…。…っと…。あっ…。矢萩デスク~。絶対に…オフレコで…。」
健之の顔に両手を合わせて、懇願するように若。
健之、
「ん~~???…ははは。分かった、分かった。大丈夫。」
にっこりと。
夕美子、心、
「ん~~???」
「取締役の中でも、…結構…乾取締役って、ソフィアとは仲…いいみたいなの。」
その若の話にいきなり夕美子、
「ぶっ。」
心、
「…ん???どしたの…デスク…???」
夕美子、心に右手を振って、
「んんんん。いやいや…、なんでもない。うん。…で、若ちゃん…。」
「特に…、美崎さんとは…。」
美崎とは「Sophia」の編集者、女性では年長の柿本美崎である。
健之と心、
「うそ。」
「多分…、これは…間違いないと思う。いつだったか、小宮さんと美崎さんが、乾さんの事で、チョメチョメしていたの…休憩室で見た事あるの。」
夕美子、
「おやおや。」
「その事、小宮さんに聞いたら、口は濁していたけど…。仕方ないよ。私には止められない。編集長も知ってる事だし…。…って…。」
心、
「わお。」




