手を握って…。 vol.032 「よろしくご贔屓のほどを…。」
「デスク。こちら…、このお店、ベルモンドのマスター、小坂洋造さん。」
若。
「ども。ここのマスターをしている小坂洋造と申します。」
にっこりとお辞儀をして洋造。
若、
「ぷっ。自分でここのマスターをしているって…。おじちゃん。」
「いやいや。いいじゃないの~。久し振りに若ちゃんの顔見れて、俺ゃ~、嬉しいよ。」
ニヒルに洋造。
「くく…。」
笑いながら若。
「あっ、で…、こちらが、今度ソフィアの編集デスクとして配属された、矢萩健之デスク。」
「初めまして。矢萩と申します。」
健之、オシボリで手を拭きながら…。
「こちらこそ。お初で…。よろしくご贔屓のほどを…。」
にこやかに洋造。
「あっ、おじちゃん、そちらの…。」
見知らぬ男性をチラリと見ながら若。
洋造、
「あ~~。こいつは…、新しく、ここの料理見習いで働く事になった、高梨、和弘ってんだ。ワコウって、ニックネームさ。」
「へぇ~~。」
そして和弘の方を向いて、
「初めまして、女性雑誌桜華の編集局、ソフィアで、編集者してます、大槻若と申します。ここは、前のデスクの小宮さんから連れて来てもらって、それからなんです。」
「節ちゃん、今頃…介護、頑張ってるかね~~。」
洋造。
「初めまして、よろしくお願いします。高梨です。」
和弘、若と健之にお辞儀をして。
「へぇ~~前のデスクの小宮さんも…ここに…???」
健之。
「えぇ~。小宮節子。ソフィアの編集デスク。ソフィアの編集者は、結構、別のお店を贔屓にしてるんだけど。彼女は、桜華が立ち上がる前からのお馴染みさんで。かれ…これ…、10数年…か…。」
健之に説明する洋造。
健之、
「へぇ~~。」
「もうひとつ。秘密言っちゃうと~。」
若。
健之、
「ん~~???」
「実は~~。おじちゃん…、言っていい…???」
洋造、若の目をチラリと見て、そして健之の顔を見て…。
「…ん…。まぁ…。まっ。言い掛けたもんは仕方ねぇだろ。いいよ。」
若、
「実はね。洋造さん、何とブリリアントの編集長、與門編集長のおじさんなの。つまり、與門さん、洋造さんの姪さんなの。」
いきなり健之、
「えっ。うそ。…そうなんですか~。」
洋造、
「…ん…。まぁ…へへ…。」




