手を握って…。 vol.236 「あ…か…ちゃん…。出来た…。」
それほど見栄えの良い容姿ではない感じの王麗華。
けれども、與門の目利きの良さが効いたのか、環境も良かったのか、
週を追うごとに、仕事を熟すようになっていった。
そんな中で、同じように、週を追うごとに、彼女を注目し始めたのが…、
信玄である。
片や、今まで以上にベルモンドに通うようになったのが康太。
そんな康太が店に来ると嬉しくて堪らないと言うのが優羅であった。
もはや1ヶ月も過ぎると、ブリリアント内では、優羅と康太の仲は周知の事実。
健之もアドバイスを贈るようになっていた。
與門、
「健之~~。康太も…そうだけど…。信玄…頼むよ~~。麗華も…、まんざらでは…ないような…。」
健之、
「…って言うか…、編集長、元々、それ…分かっていながら…。でしょう~~。」
自分の机で與門に向きながら健之。
「うん。あの子…、もしかしたら…、ここ…、おっきくするような…。そんな感じ…してね~~。それに、あの子…、信玄だったら、支えてくれるような…。初めて麗華と会った時に、不思議にそう感じた。」
健之、
「よろしいのでは…。」
「信玄なら大丈夫。私も太鼓判、押しますよ。」
「ありがと。」
そして健之、自分の席から離れて、
「人の繋がりって、凄いもんですよね~~。ここに来て、新條さんと出会わなかったら、こんな風になってないし。当然、若に出会わなかったら、ふたりの子供にも恵まれなかった。」
與門の後ろの窓に歩み寄りながら。
與門、
「そんな健之も今や、可愛い娘たち。」
「もぅ~。じぃじが手放さない。姉貴なんて、自分の妊娠より、ふたりの方に頭、言っちゃってるし。」
その話を聞いて與門、
「は~~っはっはっは~。万歳矢萩家~~。って感じだね~~。」
その時、與門のスマホに着電。
「…ん…???こんな時間に…相棒~~。」
健之、
「…と言う事は…、新條…さん…???」
與門、
「ふん。何か…あったか…???…もしもし、夕美子~~。」
電話の向こう、何の反応もない。
與門、
「もしもし…。夕美子~~。どした~???…夕美子~。夕美…。」
電話の向こう、静かではあるが、何やら男性の声がするような…。
そして、何やら泣いて…いる…。
「夕美…???夕美…。どした…???…もしかし…、泣いてる…???」
微かに聞こえる声、
「う…。う…う…。」
與門、
「夕美…???」
「よ…も…。う…う…。」
和弘、
「よ…、與門さん!!!」
電話の向こうで和弘。
與門、
「ワコウ…???どした~~???」
泣いたままで夕美子、声が出ない。
夕美子、和弘が持っているスマホに、和弘に頬を付けて、
「あ…か…ちゃん…。出来た…。あ゛~~~。」
その一言で、與門、
「へっ…???」
そしてみるみる内に潤む目。
「健之…。」
健之、
「編…集長…???」
與門、頬を伝う涙。そして、
「あか…ちゃん…。出来た。夕美子、ワコウ…。」
そして、
「赤ちゃん。出来た―――――――っ!!!!」
両手を天井に向けて、
「やった―――――――っ!!!!」
健之、與門の傍で、ガッツポーズ、
「っしゃ――――――――っ!!!」
すぐさま電話で由香里、洋造、
「やった―――――――っ!!!」
「そうか、遂に。やったか。」
ジャン、夕美子の病室で、生まれたばかりのベビーを抱いて、
「ん~~。いい顔だ。」
夕美子、
「ジャン、おじいちゃんみたい。」
「かかかか。私ら以上に、待ち兼ねてたもんね~ジャン。」
ヒサコ。
ニーラ、そしてルアナ、
「ユミコ、ワコウ。おめでとう。」
「絶対に、名シェフにしてみせる。」
ジャン。
「言うと思った。」
ブリス。
「かかかか、可愛いじゃねぇか…えぇ~。」
パソコンのカメラを見て洋造。
與門、
「ははは。ほ~んと、かっわいい~~。」
「べろべろば~~。」
由香里、涙を流しながら。
ブリリアントの全員がベルモンドの優羅のパソコンの周りに。
健之に若。亜季、真奈香、美紅、心、康太に信玄。悠宇にルイ。そして麗華と…。
「かかか。み~んな、揃ってる。」
夕美子もパソコンのカメラの前にベイビーを…。
そして、アパートで動画を見ている倫洋と友紀、
「はははは。かっわいい~。」
カメラの前で與門と由香里、
「ねね、夕美子~~。名前は…???」
その声に、夕美子と和弘、
「はは。ジャンが、名前は俺が決めるって~~。なんたって、この子のおじいちゃんだから…。抱くたびに涙零してる。ははは…。」
與門、由香里、
「うんうん。そっか、そっか~~。もぅ…ママと、パパだぞぅ~。」
夕美子、和弘、
「うん。ありがと。」
まだまだ、日本とニューヨークの生中継は…、終わらない。
――― Fin ―――




