手を握って…。 vol.217 「やられ…ましたか…。」
その話を聞いて健之、
「な~~るほど~~。それでか~。」
エレベーターの中で。
若、
「えっ…???」
健之、
「いやいや。何でも…。…うん。」
「副編集長…???」
エレベーターから降りて、首の後ろを撫でて、パンパンと叩きながら、健之、
「及びじゃ…、ないってか~~。」
そして、
「さて…。これは、ストレートか、アッパーか…。…それともジャブか…。」
後ろの若に振り向いて、
「とにかく、喰らっちまったか。」
若を手招きして…。
若、頭を傾げながら、健之の傍に。
「高梨君、ボクシング…やってるもんね~~。」
健之。
若、
「あっ。」
「覚えてる、あの時の事…???」
若、夕美子が夜の通りで男性に絡まれていた事を思い出して、
「うん。ワコウさん、強かったです。そして、カッコ良かった。」
健之、
「なぁ~。しかも、利き腕の右を使わずに左拳で…。しかも、フットワーク、軽かったなぁ~~。」
「でも…、副編集長だって、カッコ良かったですよ。あんなに足が上がるなんて…。」
健之、そんな若の言葉に、
「おやおや。」
そして、
「ふっ。そっか~~。空手は…ボクシングに…勝てなかったか~~。」
ドアを開けて、
「だ~れも…いない。ふん。」
若、
「でも…私はボクシングより、空手です。」
「そか。若ちゃんは、ボクシングより、空手か…。」
「はい。」
そして若を優しく自分に抱き寄せて、
「こんな近くに…、いたんですね~。僕の応援団が…。」
若、にっこりと、
「はい。」
「さてさて。こんなオジサンで…良いのかな~~。」
「年齢の差は、デスクとワコウさんに…負けてません。」
「ん~~???」
「あっちは…5つ差。こっちは7つ差…です。」
「えっ、そうなの…???」
「知りませんでした…???」
健之に抱かれながら若。
「そっか~~。7つ差…かぁ~~。」
そう言いながら若の髪を優しく撫でて、
「若ちゃん、身長…???」
「170…。」
「そして…。」
ぶすっとした顔で若、
「副…編集長~~。」
「かかかか。悪い悪い。冗談、冗談。」
若の左頬を右手で優しく撫でて、
「もう一度聞くけど…、こんなオジサンで…。」
その瞬間、若が顔を前に健之の唇に軽くキス。
「やられ…ましたか…。」
降参したような顔をして健之。
若、にこりとして、
「やっちゃいました。へへ。」
「では…、お礼をしないと…。」
「うん。」
目を閉じながら唇を尖らせる若。
「ば~か。」
その健之の声ににこりと笑い、唇を元に戻す。
そしてその唇に健之、優しく自分の唇を重ねる。
若、目尻から一滴の涙。
そして健之の唇をしっかりと受け止めて健之の背中に両腕を回してきつく。
その強い力に健之も若を強く抱き、深い接吻。




