手を握って…。 vol.216 「私…副編集長の事、好きです。」
「でも…、でも…。それでもいいんです。私…副編集長の事、好きです。」
大きな声でハッキリと若。
健之、運転しながら、言葉が出ない。そして数秒の沈黙。
若、少しずつ鼓動が収まってきた。
「…ごめん…なさい。いきなり…こんな事言って。」
途切れがちに息を吐きながら…。
健之、
「ん…???」
そして笑顔で若の顔を見て、
「ううん…。」
そして、
「若…ちゃん…。…勇気…出してくれて、ありがとう。」
そして前を向き直して、
「…いやはや…。しっかし…、びっくりしたね~~。そっか~~。そうだったんだ~~、全く気付かなかった。かかかか。」
そんな風に笑う健之に若。
「…ですよね…。可笑しいですよね、こんな…妹みたいな私が副編集長の事、好きなんて…。」
健之、その若の声に、
「いやいや。そういう事じゃなくって…。」
若、
「えっ…???」
「前に、新條さんからも言われた事があったんです。」
「えっ???」
「高梨君と僕…。鈍感男だって。」
その健之の声を聞いて若、
「あっ、いえ。私…、副編集長の事、鈍感なんて…。」
「ははは。いや、大丈夫。単に、あの時の事、思い出しただけだから。」
そして、また少し沈黙。
「ありがとうね、若ちゃん。」
健之。
若、
「えっ…。…あっ…。」
「そんな風に、思ってくれて…。」
雑誌社近くの交差点、黄色から赤に。
「そっ、僕は新條デスク…、好きだ。これはどうしよもないよ。」
信号機の赤を見て、交差点を通過する車を見ながら健之。
「知ってます。でも、新條デスクは…、あっ。」
その若の声に健之、
「ん……???」
ゆっくりと車を走らせる健之。
「…そっか~~。新條デスク…、好きな人…、出来たか。」
その健之の声に若、
「あっ、あの。」
ゆっくりと地下の駐車場に入る車。
「だからと言って、私……。」
車を止めて、ギアをRに。体を後ろに捻って、
「ははは。若ちゃんは何も悪くないよ。」
「副編集長…。」
車をライン内に納めて、
「多分、僕の見立てからすれば、新條さん、好きになろうとしてるの…。高梨君じゃ、ないかな~~。」
シートベルとを外して、ドアを開け、車から降りながら、
「ほぃ、お疲れ様、若ちゃん。」
シートベルトを外して、
「お疲れ様でした。」
ドアを開けて、車の外に、若。
健之、
「驚かないところを見ると…。」
若、俯きながら、
「実は…。3週間前に…。ベルモンドで…。今度のディナーファッションショーの事で、デスクに背中を押されて…。その時、洋造さんから、彼女から言われりゃあ、仕方ないよな~~。…って。もう…その流れで、結局…、デスクの彼氏も…ワコウさんに…。」




