手を握って…。 vol.213 「さてと。行こか。」
「さてと。行こか。」
テーブルの上には朝食。そして、「試験、頑張れよ。」のメモ。
そしていつもの公園のベンチ。
「…っと~~。まだ…来てないか…。…と言うより、ワコウちゃん。ちゃんと…眠れたかぁ~~???」
と、和弘の来る方角に顔を向けながら…。
「おっとっと。来た来た。」
なにやら、かなり疲れているような感じの和弘。
「おはようございます。」
ぺこりと夕美子に挨拶して。
そんな和弘の恰好を見て夕美子、
「どう~~したの、ワコウちゃん。やたらと疲れている恰好で~~???」
ベンチにドッカリとへたり込むような感じで…。
「これが…、疲れずにおられますか…。って…感じっすよ~~。」
両腕をベンチの背もたれに伸ばして、頭をグラリと後ろに。
そんな和弘の両頬を両手親指と人差し指で引っ張って、
「うりうり。」
和弘、
「痛っ。いたいた。」
「こんにゃろ、どうしたよ~~。うん…???」
「痛い~~。」
「ふふふ。どうした~~。ワコウちゃん。…由香里から…、重大ニュースって…昨夜、聞いたけど…???」
両腕を元に戻して、腰を曲げて、両膝に両手を付けて、
「聞きましたか…。」
「うん。」
少し沈黙。
「藤見さんから言われたんです。」
夕美子、
「うん。何…???」
「ニューヨークで、俺を預かるって…。」
その一言で夕美子、
「えっ!!!ニュ…、ニューヨーク…???ワコウちゃん…???」
「えぇ…。ニューヨークのジュンジョルジュで、シェフとして育てたいって…。」
「えっ、えええええ…。ニューヨークって…、ワコウちゃん。今のベルモンド…???…はい…???」
「えぇ…。もし、そうなったら…、多分…洋造さんとは…、もう…。…それよりも…何も…。新條さんとも…、みんなとも…。」
「えっ???えっえっ。うそ。…そんな…。」
そして昨夜の由香里の話しを思い出しながら夕美子、頭の中で、
「…それで…、由香里…。」
和弘、
「由香里さんのディナーショーだって、俺にしちゃ、まさか…だったのに…。それ以上に藤見さんの…ニューヨークなんて…。」
「ワコウ…ちゃん…。」
「完璧に…、キャパオーバーですよ…。」
髪を掻き上げながら、そして両手で顔を覆いながら、和弘、
「どう…しよ。」
夕美子、一気に頭の中に浮かんだ、
「…ワコウちゃんと…、さよなら…。」
そして、一瞬自分でも気づかない感じの頬を伝う涙。そして、鼻水を啜る音。
けれども、何故か次から次へと涙が溢れて出て来る。
自分でも、
「えっ…???えっ…???」
和弘、その夕美子の声を聞いて、
「えっ…???新條…さん…???」
夕美子、濡らした頬を両手で拭いながら、
「んんん…、何でもない。うん。」
そう言いながらも何故か止まらない涙。涙声になって、
「なんで…だろ…。涙…止まらない。」




