手を握って…。 vol.021 「大元締めのお出ましだ。」
ドアを開けて店に入る與門と夕美子。
そしてその後から信玄。しかも、一歩一歩確実に。
そして…、
「こんばんは~~。」
「ほいほい、お出でなすった。大元締めのお出ましだ。」
ニッコリと洋造。
「つ~か、なんだい、その歩き方ぁ~???これから盗っ人にでもな~るつもりかぁ~???」
「なんで私たちが盗っ人になんなきゃなんないのよ。」
洋造に仏頂面で夕美子。
「で~~。誰が大元締めだって~~???」
與門。
「おやおや、聞こえましたか。」
苦笑いをしながら洋造。
「聞こえるように言ってるくせに…。」
スツールに落ち着きながら與門。
その隣に夕美子。そしてボックス席のテーブルの上を拭いている男性に指差して、
夕美子に教える信玄。
「お~~い、ワコウ~。お出ましだ~~。」
和弘の背中に声掛けるように。
「ちょっと、ちょっと、おじちゃん。お出ましってのは…、ないんじゃない…???」
夕美子。
「睨んだ顔も良いんだなぁ~これが~~。てへへへ。」
笑顔で夕美子を褒め契る洋造。
「そりゃ、なんてったって、ウチの…唯一の…箱入り娘ですから。」
下くちびるを伸ばして與門。
そのすぐ後に、「ぶっ。」と、吹き出す。
「ちょっと~~、與門~~。」
夕美子。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの中に戻って和弘。
そんな和弘の肩を抱くように腕を回し、與門と夕美子の顔に、
「ウチで料理見習いする事になった、高梨和弘。ワコウってんだ。昭和の和、弘法大師の弘と書いてワコウ。可愛いがってくれ。」
そんな洋造からの紹介に、
「高梨和弘と言います。全く東京って慣れてなくって。でも…、洋造さんの下で頑張ります。よろしくお願いします。」
與門と夕美子に頭を下げる和弘。
「…でな…。右側の人が…。」
指差しながら洋造。
その声を遮るように與門、
「あ~~。いい、いい。自分で自己紹介するから…。」
右手をひらひらとさせて洋造に言う與門。和弘の顔を見て、
「そこに桜華って、出版会社があるんだけど…。そこの編集局で、編集長やってます。與門煌と言います。よろしくね。」
和弘に向かってお辞儀をしてにっこりと。
「はい。では、ウチの箱入り娘。」
そう言って隣の夕美子の左肩をポン。
「何バカな事…。」
夕美子。
洋造、
「かかかか。」