手を握って…。 vol.212 「ちゃんと、彼氏殿、支えてあげな。」
スマホの、「終了ボタン」を押して夕美子。唇を尖らせて。
與門、
「何々、どうしたの…一体…???」
「ベルモンドにニューヨークの三ツ星レストラン、ジュンジョルジュの…藤見朋花が来たんだって。」
「うん。それはあんたから聞いた。ワコウちゃんに用があるんでしょ。」
エレベーターに乗り込んで夕美子、
「うん。その…藤見朋花が…、何だか、ワコウちゃんに、重大ニュース…、持ってきた…らし…い。」
目をパチクリさせながら夕美子。
與門、そんな夕美子の顔を見て、
「重大…ニュース…???」
腕組みしながら夕美子、
「とにかく由香里は、ワコウちゃんひとりでは支えきれないから、支えてあげなって…。」
與門、
「は…あ…???」
「全く…分かんない。」
右人差し指を右頬に、そして頭を傾げて夕美子。
「ふ~~ん。ワコウちゃんに…、重大…ニュース…か…。なんだ…???」
與門。
エレベーターを出て通路に。
「…まっ、でも…とにかくワコウちゃん、忙しいよね~。ファッションショーのディナーも引き受けて…。」
夕美子、
「うん。まっ、そっちは…私が…背中押しちゃったんだけど…。」
「かかか。彼女から、背中押されちゃ、引き受けない訳には…。姉さん女房。頑張りな。」
その與門の声に夕美子、
「姉さん女房、言うな。」
両眉を八の字にして、唇を尖らせる夕美子。
「かかか。はいはい。お姉さま。…でも、ワコウちゃん、だんだん好きになって来てんでしょ。顔に書いてあるぞっ。」
少し間を開けて、
「んもぅ~~。しっかたないじゃん。もう…知られているんだから~~。」
少し前を行く夕美子、その後ろ姿を見て與門、笑顔で…。
「でも…。」
夕美子、
「これだけは言える。」
與門、
「うん…???」
「ワコウちゃんと一緒だと…、肩の力抜ける。なんだかホッとするんだわ。安心させて…くれるって…言うか…。」
目の前で言う後ろ姿の夕美子に與門、
「おやおや…。これは、これは…、まさか、ここでお惚気…聞かされるとは…。かかかか。」
「もぅ~~。與門がけしかけたんだろうが~~。」
「はいはい。」
そして夕美子の肩を優しく抱いて、
「ちゃんと、彼氏殿、支えてあげな。相棒の私からのお願いでもあるんだから…。」
その声に、少しだけ目を潤ませて夕美子、
「うん。」
そして息を大きく吸って、
「さて…、どんな重大ニュースなのやら…。」
與門、
「ん~~???」
「さっぱりだわ。」
「ふん。」
夕美子、帰宅してテーブルの上、一枚のメモ、
「先に寝る。晩飯、食えよ。明日、試験…あるから…。…ってか。」
そして、唇を尖らせて、
「ほぅほぅ。そっか。明日、倫、危険物取扱の…試験だったっか…。へぃへぃ。」
そして、倫洋の部屋のドアを少しだけ開けて、小声で、
「がんばれよ。」




