手を握って…。 vol.210 「ある意味での…投資…ですね~。」
その途端、4人一斉に、
「え゛―――――――――っ!!!!」
ボックス席のそれぞれの客が一斉にカウンター席を見る。
洋造、
「おぃおぃ。」
ボックス席を見て、謝るように。
由香里、
「ええええ。何…。じゃ、シェフとして、ワコウちゃん、ニューヨークのジュンジョルジュで、育てるって…事…???」
悠宇、
「おぃおぃ、凄過ぎだよ、それって…。有り得ないでしょ。」
和弘、
「…う…、うん。しかも、僕の日常の世話も一切は…面倒見るって…。」
心、
「ええええ。…って事は…向こう行っても、何にも不自由なしって…事…???」
和弘、
「えぇ…。但し、言葉だけは…どうしようもないですけど…。通訳も付けるとの事ですが…。実際は自分なりに、勉強するしか…。」
「ええええ…。…じゃ…、ワコウさん…。もしかして…、こっちには…。」
若。
「ま…さか…、2ヶ月や3ヶ月…って…。」
そんな若に由香里、頭をポンポンと押さえて、
「な~~訳は…ないでしょうね~~。」
和弘、
「えぇ…。最短で3年、若しくは…5年。…何やら、日本のシェフを産みだしたいって…、言ってましたから…。」
「考えようによっちゃあ、一生問題だよ、こりゃ。」
若、心、
「え~~~~!!!!」
悠宇、
「つまりは…。」
スマホでジュンジョルジュのホームページを見ながら、
「ある意味での…投資…ですね~。ワコウさん…。とんでもない人から、見込まれましたよね~~。」
由香里、
「うん。見初められちゃったね~ワコウちゃん。」
和弘、
「どうするよ~~。」
洋造、
「確かにな~~。…数か月前はまだ長崎の片田舎。そんで、東京に出て来たと思ったら、今度はいきなりニューヨークときちまったぃ。」
由香里、
「え。ええええ…???…そうだったのワコウちゃん…???」
その由香里に若と心、
「うん。」
由香里、悠宇、
「わお。」
「…で、今や目の前に、大きな道が真っ直ぐ伸びているって訳だ。」
そして、
「しっかし…、日常の生活まで一切、面倒見るっていうのは…。さすがだね~~。」
悠宇、
「ワコウさん…、惚れ込まれましたね~~。」
唇を尖らせながら由香里、
「参ったね~~。」
そして腕組みをする。
若、心、
「えっ…???」
「夕~美子だよ~~。」
若、心、
「あ~~~。」
心、
「デスク~~。」
若、
「ワコウ…さん…。」
洋造、
「えぃえぃ。えぃえぃえぃ。って~~な~~。どうしたもんかい。」
「ヒャ~~。ようやく、けり着いた~~。うぉい。帰るか~~。」
夕美子。
「矢萩さん…どう…???」
健之、
「ほぃ。こちらも何とか…OKですね~~。帰りますか~~。編集長~~???」
「あいよ~~。」
既に21時はとうに回っていた。
「さて…と。」
スマホでポン。3回のコールで相手が出る。何やら周りが賑やかな様子。
掛かってきた電話に、
「あいよ。仕事…終わった~~???」
由香里。




