手を握って…。 vol.209 和弘、「いや…。参っちゃって…。」
由香里、
「ん…。まぁ…。あの時は…ね。ね、悠宇。」
悠宇、
「うん。まぁ…、今までにない発想でのブランド立ち上げ…でしたから…。リリースまで、一切の取材お断りで…。…と、言うより、知名度もあまりなかったんですけど…。」
苦笑いをする悠宇。
「まっ、それでも、どこからか、嗅ぎ付けるもんなんだよな~。マスコミは~~。」
「それから数日でリリースして。その途端です。一気に…ダ~イナマイト。ヒサコ・マーラの名前がニューヨーク中に、広がった~~。」
「私たちも…あの時は…数日…徹夜続きだったよね。」
悠宇にくすくすと笑って。
「私なんて初めての経験だったから、もう…ダウン寸前。…ったく…、悠宇がいなかったら、どうしようもなかったね~~。かかか。」
「へぇ~~。やっぱり凄い人なんだ、ヒサコ・マーラ。」
心。
「うん。その頃かな…。2度くらい…、取引先から食事の招待でジュンジョルジュでね~。シェフと、今の藤見さん。トモカ・フジミで通ってたから、あの頃は…。数名のシェフと会ったね。」
悠宇に。
「うん。」
「じゃ~、シェフのジャン・クロードさんとも…???」
いきなり和弘。
その声に由香里、
「うん。物凄いカッコいい叔父様。映画俳優みたいな人なんだわ。」
和弘、
「へぇ~~~。」
由香里、
「…ん…???…って言うか、ワコウちゃん!!!」
カウンタをパンと叩いて由香里。
その音と声に、
「はい。」
と、和弘。
「…で、彼女の話し…なんだったの。夕美子、心配してる。教えてあげないと。」
若、心、
「うんうん。」
洋造、
「ワコウ…。」
和弘、その由香里の声に、いきなり困ったような顔をして…。
首を傾げたり、そっぽを向く様に…。
「いや~~。」
仕舞には額に左手の平を当てて。
由香里、
「ど~~したの~~。」
和弘、
「いや…。参っちゃって…。なんで、僕なのか…。」
由香里、
「はい…???」
若、心、
「へっ…???」
和弘、
「ん~~~。藤見さんが言うには…。」
由香里、
「うん。」
「ニューヨークに…来てくれ…って…。」
由香里、
「そんなの…。行けばいいじゃ~ん。折角の好意~~。ねぇ~洋造さん…。」
と、言いながら洋造の顔を見て。
洋造、顔が止まっている。
「洋造…さ…。…えっ!!!ワコウちゃん。今、何てった???」
和弘、ぽつりと、
「ニューヨークに来てくれって…。」
由香里、
「ニューヨー…。え゛―――――――っ!!!…ニューヨーク~~~。」
口をポカーンと開けて由香里。
隣の若、心、目をパチクリ。
「……。」
心、思いっ切り、口の中のものを飲みこんで、
「ニュ、ニュ。…つまりは…???ワコウちゃん…???」
「つまりは…、シェフとして…、育て…たい…って…。」




