手を握って…。 vol.206 スマホの向こう、夕美子…。
スマホの向こう、夕美子、
「…って…、あんた…、どっ…。あ~~、ベルモンドいるね~~。かかか。」
「ビンゴ~~。…って、あんたね~~。一言も私に言ってないでしょ、ワコウちゃんの事~~。んもぅ~。今、洋造さんに聞いってビックリしたよ。」
心、
「えっ…!!!…って、事は…、由香里さん、今…電話…デスク…???うそ――――――っ!!!」
若、
「心さん。声、おっきい。」
目を細めにして…、心。
「ご…ごめん。」
ボックス席では藤見がパンフレットに指を当てながら和弘にあれこれと話ている。
「ごめん、ごめん。…いや、それより、例の三ツ星が余りにもインパクト…あり過ぎて…。」
机の上で夕美子。
目の前で亜季が、
「んじゃ、おっ先~~。」
そんな亜季に左手でバイ。
「その三ツ星、今、ボックス席でワコウちゃんと話してる。」
由香里、チラリと後ろに顔を向けて。
「うそ――――――っ!!!」
その夕美子の声に、後ろの席の與門、そして斜め右側の机で健之、
「!!!」
夕美子、
「…で…???…どんな…???」
由香里、
「かかかかか。心配でしょう~~。ニッ。大事な彼氏~~。」
由香里の隣で悠宇、
「くくくく。」
「あっ、いや…。まぁ…。その…。」
「これから、こっち…、来る…???」
そんな由香里の声に、夕美子、
「…あっ、いや…。それ…が…。まだ…。これ…仕上げないと…。」
「お忙しいようで…。」
夕美子、下を向いて、髪の中に右手を…。
「だ~いじょうぶだって。ふふ。…任せな。私にも大事なお前さんの大切な人だからね~~。」
「ゆ・か・り…。」
「おぅ。」
「恩に着る。」
「はは。仕事…が~んばって~~。彼女殿~~。」
そして電話が切れる。
與門、
「夕美子…???」
健之、
「どうか…しま…???」
心、
「由香里さ~ん。」
その瞬間由香里、唇に人差し指、
「シ――――ッ!!!」
唇を真一文字に、目を丸く、
「まっ、そういう事で~~。」
カウンターの中の洋造、
「彼氏いない歴から、ようやく、卒業だ~ね~。かかか。」
心、いきなりテーブルに頭を突いて、
「良かった~~~。」
若、
「はははは。うん。」
顔を起こして、何故かしら涙目の心。
「わっ。心さん…目に涙。」
由香里、
「かかかか。」
「だって…、嬉しいんだもん。私の姉貴分だもん。」
「ははは。夕美子も良い部下を持ったもんだ。うん。」
その時、ポック席から、
「えっ!!!」
周りの客もふたりの席に視線を。
洋造、由香里、
「…ん…???」
藤見、
「高梨さん…。本当~に、ごめんなさい。いきなり、こんな話をして、申し訳ないんだけど…。何とか前向きに考えて欲しい。決して、高梨さんにとって悪い話ではないと思う。」
和弘、
「……。」
「オーナーは、一度、ここであなたを見て、あなたの料理を食べてすぐに決めたみたい。」
和弘、パンフレットを見ながら…。




