手を握って…。 vol.205 なかなか言葉が出て来ない和弘。
藤見、にっこりと目の前の男性の顔を見て。
「そして、何の前触れもなくこちらの方から、お話しがある。なんて、申し訳ありませんでした。」
そんな藤見の話に和弘、右手をヒラヒラさせて。
「いえいえ、とんでもない。」
カウンターの右寄りの席で若に凭れるように心、
「誰…、あの人…???」
「三つ星レストラン、ジュンジョルジュのスーシェフ、藤見朋花。」
ワイングラスを持って、中のワインを見ながら由香里。
途端に心、
「三つ星レストラン――――――ッ!!!」
「声、おっきい、心ちゃん。」
由香里。
「あっ。あっ。あ…。…ごめん。」
和弘、目の前の名刺を取り上げて。
「レストラン・ジュンジョルジュ・東京、シェフ、藤見…、朋花…さん。…素敵な、名刺…ですね…。」
「ふふ。ありがとうございます。」
笑顔で和弘を見つめる藤見。
中々目の前の女性の顔を真正面から見れない和弘。額を撫でながら、
「あっ。ごめんなさい。申し訳ないです。僕…、名刺って…持ってなくって…。」
恐縮するように和弘。
藤見、
「いえいえ。お気になさらないで…。」
和弘、
「あっ、申し…遅れました…。」
ようやく、目の前の女性の顔をチラチラと見ながら…。
そしてカウンターの方に目を移して。
何かしら、誰もこっちを見ていない。しかも、何故かシ~~ンと。
「ふ~~。」
なかなか言葉が出て来ない和弘。また下を向いて…。
その時、
「いらっしゃいませ。いつも…どうも…。ありがとうございます。」
そう言いながら藤見の前にコーヒーを。洋造である。
藤見、
「あっ。ありがとうございます。」
「こんな…殺風景な店ですが、お気に召したら、是非、今後共に、よろしくお引き立てを…。」
頭を撫でながら洋造。
そんな洋造に藤見、
「いえいえ、とんでもない。物凄いとっても素敵なお店。一度来て、惚れ込んだくらいですから…。お客様にも…恵まれてますよね~~。」
笑顔で藤見。
照れながら洋造、
「ありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりと。」
そして和弘の左二の腕を手で突っつき、
「ほれ。」
その仕草を見て藤見、にっこりと。
「高梨…和弘…と申します。」
ようやく名前を言えた和弘。
藤見、
「たかなし…かずひろ…さん…。」
「よろしく…、お願いします。」
そして、丁寧に和弘にお辞儀をして、
「長い、お付き合いが出来たら、光栄です。」
その声に和弘、
「えっ…???」
見兼ねたように由香里、バッグからスマホを取り出し、指でポン。
相手が出る。
「ふん、由香里~~。お疲れ~~。どした~~???」
夕美子である。
「おぅ、ワコウちゃんの彼女~~。」
その声に若が、
「クスッ。」
心、
「へっ…???ワコウちゃんの…、彼女って…誰…???」
その心の声に、これまた、
「かかかか。」
と、若。




