手を握って…。 vol.184 目の上にあっかんべぇ~の夕美子。
ベンチに仰向けになり、早朝の空、鳥の囀り…。
目を閉じると、何かしら、うとうとと…。
その瞬間、いきなり右頬に冷たい感触。
「わっ!!!」
いきなり耳に響く、
「キャッハハハハ。起きた~~???」
「えええええ…???なに…???」
目を開けてみると、目の上にあっかんべぇ~の夕美子。
「ふふ~ん。」
慌てて上体を起こす和弘、
「びっくりした~~~。ぜ~んぜん気付かなかった~~。」
「気付く訳ないよ、ワコウちゃん、ベンチに寝転んだ姿見つけて、そろり、そろりと来たから。ニシ。」
にっこりとしながら、意地悪そうな顔をして夕美子。
和弘、ベンチに座り直して、不貞腐れたような顔して、
「もぅ~~。勘弁して下さいよ~~。」
そんな和弘の隣に座って、両腕を空に、
「きっもち良いね~~。あ~~。」
「結構昨夜、飲んでたみたいだから、今朝は来ないと思ってたんだけど…。」
そんな和弘に夕美子、
「んや。結構気持ち良く目が覚めた。うん。…んで…、なんでだろ、自然に体、動いてたよ。うん。ヨシ、走ろって…。」
和弘、
「へぇ~~~。」
「な~によ~。その、へぇ~~って…???」
左二の腕で和弘の右腕を突っつく夕美子。
可笑しがって和弘、
「いやいやいや。…特に意味は…???」
緑の上から見える遠くの建物を観ながら夕美子、
「倫…、友紀ちゃんと、お店…行ったんだってね。」
いきなりのその声に和弘、
「えぇ…。綺麗な…人ですね~。町田…さんって、言いましたか…???」
夕美子、
「ほほぅ、凄い記憶力。もう~覚えちゃったか。」
「…って、言うか、僕って、人の名前…覚えるの…早いみたいです。大体…、一度聴けば、覚えちゃうみたい。」
「凄~~。」
「それにしても、驚きですよね~~。」
「ふん…???」
「矢萩さんと若ちゃん。ソフィアからブリリアントに…なんて…。」
「ねぇ~~。」
「え…って…、新條さんも知らなかったんですか…???」
「あったりまえじゃない。全然。全く前触れなかったもん。」
「ふ~~ん。」
「な~にが、ふ~んだよ、この…。」
そう言いながら和弘の脇腹を両拳でグリグリと。
「わっ、やめて、やめて、くすぐったいって。」
いきなりのけ反る和弘。
「かかかか。ほい。歩こ。」
「はい。」
歩きながら留めていたはずのヘアスカーフを一旦解いて首を振る夕美子。
髪が左右に揺れ、その髪の薫りが和弘の鼻に感じる。
和弘、そんな夕美子を見て、ニッコリと。
そしてまたあらためて髪をまとめてヘアスカーフで留める。
「ふ~~。気っ持ち良い~~。」
夕美子。
「んでは…、走りますか~~。」
和弘。
「お~し。行くか。」
「えぇ。」
そして、走りながら、
「あっ、ワコウちゃん。例のヤツ、続きやろ。」
和弘、
「はい…???…例のヤツ…???」




