手を握って…。 vol.175 「ひとりひとりのお客さん、大事にしてぇんで…。」
和弘の料理を食べながら真奈香、そして香澄、
「ん~ん~。」
「お~~いし。」
目をパチクリさせながら香澄。
にっこりと唇に左中指を付けて真奈香、
「でっしょう~~。ウチの取引先の人にも大好評。」
「うんうん。分かるような気がする~~。…でも、ここって、レストランでもないのに…、凄いよね~~。こんな味…出せるんだ~~。ねね、真奈~~。」
「…ん…???」
「ここって、ブリリアントで雑誌に…載せないの~~???…こんなに美味しい料理…。」
そんな香澄の声に真奈香、
「えっ…???あ…。はははは…。」
思わず変顔で、そして洋造を見て。
洋造、
「けけけけ。お嬢さん。藪さんって、仰いましたか…。」
香澄、キョトンとして、
「はい。」
「残念ながら、ここ~~、一切の取材…。お断りしてんだ。」
その声に香澄、
「えっ…???」
3人の顔を見ながら、
「どう…し…???」
その時、香澄、
「もし…か…して…???」
店内をぐるりと…。そして和弘を見ながら、
「そ…っか…。…ふふ…。そう…だよね~~。へへ。…ごめんなさい。」
チロリと舌を出して。
洋造、
「来てくれる、ひとりひとりのお客さん、大事にしてぇんで…。…しかも…。」
和弘の左肩をトンと叩いて、
「俺にはこいつの味とアイディアは出せねえ。」
その声に和弘、
「洋造…さん…。」
真奈香、
「ふふ…。おじちゃんとワコウちゃんの顔…、見れるだけでも私たち、嬉しいもん。」
「けけけけ。真奈香~。何も出ねぇぞ~~。」
ドアが開いて、
「僕も…初めて見ましたよ、一之瀬姉妹。」
健之。
夕美子、
「凄いでしょ。こんば…。あれ…???わぁ。」
「おぅ、お疲れ~~。お揃いでぇ~~。」
洋造。
後ろを振り向いて香澄。
「アハ、新條デスク~~。今晩は~~。」
「何と、何と。…もしかして…。初めてじゃない~~。ヤブちゃ~~ん。」
そう言いながら、自然に真奈香の左隣に落ち着く夕美子。
そして和弘に手で合図。
和弘もその合図にコクリと頷き、夕美子に笑顔を返す。
そして、片やこちらも自然に香澄の右隣に落ち着く健之。
香澄、
「えっ…???ええええ…???」
右左、首を横に。
「新條デスク、矢萩デスク、なんで…離…れ…て…???」
健之、
「ん…???まぁ…、これが…自然か…な…。」
香澄、
「…し…ぜ…ん…。…???」
「いや…、だって、美味しい料理食べてんのに、席移れる訳ないじゃん。しかも、同じ会社の仲間でさ。」
そんな話しをしながらも、和弘、夕美子に、
そして健之にグラスに入った生ビールを。
「おっ、ありがとう。」
そして夕美子に向かって、
「では。」
夕美子もグラスをかざして、
「おつかれさま~。」




