手を握って…。 vol.171 「あんた…異動になった先…。」
瑠唯子、ソファから離れてキッチンに歩きながら、
「どしたの健之…???」
五大、
「ん~~???勤務で何か…???」
健之、頭を掻きながら、ビールを喉に、
「ふ~~。」
そして口を尖らせて、
「編集局…、異動になった…。ははは…。」
瑠唯子、
「は…あ…???」
五大、
「おや…。」
「今までよりは…、若年層…向け…。」
キッチンで瑠唯子、
「ふ~~ん。」
その時、瑠唯子、
「あっ。…もし…か…して…、だけど…。もしかして…、だけど、もしかして…。」
五大、
「なんだよ、それ…。かかか。瑠唯ちゃん。」
健之、
「ん~~???どしたの…姉貴~。」
「もしかして…、あんた…異動になった先…。あの…、前に一度、青山であった人の…編集局…だったりして…???」
その瑠唯子の声に、
「へっ…???なんで分かったの…???」
「わお。当たった~~。」
フライパンを上下に。
「ん~~。な~んと…なく…ねぇ…。」
そして、キャビネットからお皿を出して、盛り付けながら、
「思い付きで言ったら当たっちゃった。はははは~~。」
「まぁ、ある事件があってから、そっちの編集局で仕事をしてるんだけど…さ。」
五大、
「ふ~~ん。ほぃ、健之君。」
空になった健之のタンブラーにビールを注ぎながら。
「な~~んだ。つまりは彼女と一緒に仕事してんじゃん。」
そんな瑠唯子に健之、
「…ま…ぁ…ね。」
「ほぃさぁ。出来たよ。あんたの晩御飯も一緒に。」
五大、
「ん~~。旨そう。」
「で…。彼女と、浮いた話しって…、ないの…???」
いきなり瑠唯子。
その瑠唯子の声に、こちらもいきなり、
「ぶ―――――っ!!!!」
吹き出す健之。
「きったな~~。んもぅ~~。健之~~。おかずに入っちゃったじゃな~い。」
五大、
「かかかか。」
「ごほっ。ごほっ。」
口を塞ぎながら、少し喉に詰まったような感じで、
「ごめん、ごめん。う~~、ほっほっほっ。おぅ~~。…いや…。いきな…り…。なに…???姉貴。ごほっ。あぁ~~。」
「いや…。今まであんた、編集局の話って、あんまりしなかったけど…。ここ数日…、結構話すからさ。ほらほら、例のインサイダー取引規制違反の事だったり…。おじちゃんにも連絡してたし…。何てったっけ…。しん…じょう…さん…???編集デスク…???」
その瑠唯子の話を聞いて五大、
「へぇ~~~。」
その時、いきなり頭に浮かんだ路上でのあの時。
咄嗟に夕美子を抱き抱えて、その後に、
夕美子が振り向いた瞬間に唇と唇が触れてしまった。
瑠唯子、
「ふん。なんだ、気があるんじゃない。その沈黙。」
健之、
「へっ???」
「バ~カねぇ~。人から誰かさんの事言われて、ピンポンできなかったら。つまりは気があるって証拠でしょ。」
健之、手を振りながら、
「いやいやいやいやいや。」




