手を握って…。 vol.169 「かなりの…若い人…、でさ…。」
「かなりの…若い人…、でさ…。」
靴を脱ぎながらの倫洋。
パンプスを脱いで倫洋を超えながら夕美子、
「若いよ、彼…。」
倫洋、
「えっ…???」
「高梨和弘君、倫と同い年だよ、彼。ニックネーム、ワコウちゃん。」
リビングのテーブルにバッグを置いて、
「さて。ごっ飯~~。」
ゆっくりとリビングに歩み寄って、
「うん、洋造さん、ワコウって言ってた。」
「ふん。彼…物凄い料理上手なんだわ。」
「うん。友もびっくりしてた。」
「でしょう~~。」
髪を後ろにまとめながら、そのままキッチンに立っての夕美子。
少し黙ったままの倫洋。
そして、
「姉ちゃん。」
いきなり。
夕美子、
「ん~~???」
そしてまた黙り込む倫洋。
夕美子、
「何???どしたのよ…???」
「友紀…、もう知ってんだよ。」
その声に夕美子、
「ええ…???何…を…???」
倫洋、
「洋造さんが言ってた。あの若い人、姉ちゃんの彼氏だって。」
その声を聞いて夕美子、いきなりドキン。
一瞬、体の動きが止まったかと思ったら、また動き、
「な…、な~にバカ言ってんのよ~~。」
「なんで、言ってくんない訳…???」
「いや…、なんでって…。だって…、ただの…。」
倫洋、
「ただの…、なんだよ。」
夕美子、頭の中で…、
「…ったく…、おじちゃん…。あんのヤツ~~…。」
「朝のジョギングで…、いつも…一緒なんだって…???」
その声で夕美子、またビクン。
「うそ。」
そしてまた頭の中で、
「…そこまで言うか…。」
今度は冷蔵庫を開けて、
「…う、うん。いつだったか、朝…、途中でバッタリ会ってね…。それからは…。」
少し間を空けて、
「でも…、ひとりで走っているよりは…。」
椅子の背もたれに右手を置いて倫洋、
「姉ちゃん。」
夕美子、
「何々、何々。」
少し慌てながら。
「友紀が~~。」
「友…紀…ちゃんが…???何…???」
「その…ワコウって…人に…。」
夕美子、
「……。」
「お姉さんの夕美子さんを、よろしくって…。」
その言葉に夕美子、
「えっ…???」
椅子を引いて座りながら倫洋、
「…ったく~~。びっくりするじゃんかよ~~。いきなり目の前で、姉ちゃんのこれ。…な~んて小指出されりゃ。」
少し赤くなっての夕美子。野菜を水で洗いながら、
「……。」
「友紀、喜んでた。」
夕美子、
「……。」
「いいんじゃないのぉ~~。姉ちゃんも好きなら、俺…、応援するけど…。」
そう言いながら冷蔵庫の扉を開けてビールを出す倫洋。
「倫…。」
「いや…、だって…、友紀が、そう思ってんだから…、俺…反対する訳…ねぇだろ…。あいつ、怒ると、俺…、敵わねえから…。」
その言葉を聞いて夕美子、
「ぷっ。」
「いい人…みたい…だった。自分から…。」
そのままにっこりと黙り込む倫洋。
夕美子、
「…ん…???何よ…???」




