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手を握って…。 vol.016  「何だかお邪魔みたい…。」

先に、休憩ラウンジで編集者とコーヒーを飲んでいた男性、矢萩健之。

入って来た夕美子と亜季に顔を向けてニッコリと、

「お疲れ様です。」


亜季、小さな声で、

「…何というタイミング…。」

そう言いながら腕組みしている夕美子の左二の腕を右肘で突っつく。


夕美子、

「えっ…???な…、何…???」



健之の向かいに座っている編集者、

ブリリアントの編集者で言えば、上杉信玄とほぼ同じ。新人編集者である。


名前を大槻若(おおつきわか)

「すみません、デスク。私、そろそろ戻ります。」


そんな若に健之、

「あぁ…。…いや…、でも…まだ話し、途中だけど…。」


近くに座ってコーヒーを飲む夕美子と亜季の顔を見て、

いきなり緊張した面持ちの若。



「あっ、ごめんなさい。私たち、何だかお邪魔みたい…。」

そんな言葉をポツリと亜季。


亜季の顔を見て頷く夕美子、一度椅子に座ったものの、

立ち上がり出て行こうとするふたり。そんなふたりの背中で話すように健之。

「そばに、そして、回りに誰がいたとしても、自分の言うべき事は言わないと、後々、自分が後悔する事になるよ。」


若、

「……。」


「しかも、君はまだ編集者としても成り立てなんだ。何でも吸収出来るものは吸収しておいて損はない。」


そんな健之の話しを聞いて若。ようやく、

「ありがとうございます、デスク。…実は……。」



まだ、ふたりの話しは続く。


夕美子、

「さて…。亜季。」


そんな夕美子に頷いて、椅子から立ち上がる亜季。

椅子から離れて、歩き出すその時、若に顔を向けてニコリと微笑む夕美子。

そして、若に手を振って。


その途端に若の表情が変わる。そして夕美子に笑顔で…。


そんな若の顔を見て、顔は若を向きながらも自分の後ろに目をやるような仕草で健之。

「僕も…負けてられないな。以前のデスクも、みんなに好かれていたようだね。」


若、にっこりと、

「はい。」

笑顔になりながらも、寂しそうに…、

「お母さんの介護で、和歌山…帰っちゃいました。」


「そうだってね~~。さて。がんばろ。読者は、編集者が新人だろうが、ベテランだろうが、関係ないからね~。」


若、

「はい。よろしくお願いします。」




自分の席に着いた夕美子、

「さて…。」

机の上の書類を見て、

「…ん…???…ふふ…、心~~。」






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