手を握って…。 vol.150 「信頼するクライアント様から、預かっている財産ですから…。」
「しかも…、私からあんな電話をしておいて、もうおふたりとも、いらっしゃると言う。」
喜子、申し訳なさそうに…。そしてちょっぴり舌を出して、
「穴があったら…、入りたい気分…。」
その言葉に夕美子、何とも申し訳なさそうに…、
「私どももびっくりしまして…。まさか、あんな形で、全く訳の分からない状態で、お得意様の商品が…。」
喜子、
「そうなのよね~。比沙子も自分なりに調べている最中だから、とは言ってたけど…。」
健之、
「えぇ…。」
夕美子、健之の顔を見て、健之、
「そこで…。」
喜子、
「えっ…???」
「インターネットでの無断な販売となる訳ですから…。」
「えぇ…。」
「事実上、ネット犯罪と言う事にも…。」
「多分…、そう…なるの…かしら…。ねぇ…。」
「既に、私どものお得意様たる御社が被害に遭っている。そして、同じように、他社であるセントラル・ムードも…。」
喜子、健之の話に真っ直ぐに。
「2社が被害に遭っていると言う事は…。」
「ふん…。」
「まだ、他にも…。」
「ん~~。なるほど…。」
健之、
「そこで…。」
座っている姿勢を少し直して…。
夕美子、
「うん。」
喜子、
「…ん…???」
健之、
「社長、これは何分、オフレコで、お願いしたいのですが…。」
その矢萩の言葉に目を見開かせて、口を尖らせながら、
「ふん…。」
首を縦に…。
「実は…、私の母の妹の旦那が…、警視庁の刑事をしてまして…。」
その言葉に喜子、
「あら。」
「こちらに来る前に…、今回のこの事態を…電話で…、まぁ…、通報…と言うと、語弊があるかも…知れませんが…。」
喜子、
「あらま。凄い。」
夕美子、夢野の顔を見ながら頷いて、そして、
「矢萩の方から、捜査依頼と言う事で…。警察の方も、動いてくれていると…。」
健之、
「実際、インターネットと言う事ですから、このまま放置しておけば間違いなく…。」
夕美子と同時に、
「拡散は時間の問題かと…。」
健之、
「しかも…、ある意味…、お客様にもご迷惑が掛かると言う…。事に…成りかねない…かと…。」
夕美子、
「大切なお客様に…誤解を招く事態にも…現在…なっている事実…。」
そして、
「私たちが成している事は全て、価値ある製品、そして御客様の期待に応えるべく製品。そして御客様が憧れている製品を、信頼するクライアント様から、預かっている財産ですから…。」
「そして…、それを守ると言うのも…、我々の責務かと…。」
健之。
目の前のふたりの話を聞いて夢野、いきなり両肩をガクッと落として。
そしてにっこりとして、
「はぁ…。」
夕美子、健之、
「…ん…???」
少し目を潤ませて喜子、
「へへ…。うん。…はは。」
目尻を指先でなぞって…。




