手を握って…。 vol.144 亜季、髪を掻き揚げながら…。
屋外の撮影場所で亜季、
「はい…。どうしました~デスク~???」
電話口で健之、
「お疲れ様。実は亜季ちゃん、たった今…、……。」
健之の話を聞きながら亜季、
「えっ、うそ。」
目をパチクリさせながら、撮影風景に振り返り、
「いやいやいやいや。有り得ない。全く。絶対。どっから、どうやって…。……、え――――――っ。なんでそういう事に…なってる…。」
亜季、髪を掻き揚げながら、口角を捻じ曲げて、
「嫌だ~~。そういうのぉ~~。信じらんな~い。もぅ~~。」
電話口で叫んでいる亜季に健之、
「亜紀ちゃん、亜季ちゃん、落ち着いて。」
「落ち着いてなんていらんないよ。それ、夢野社長にまで伝わってるんでしよ。最悪だよもぅ~。契約違反になっちゃう。ブリリアントで、ここ、上位だよ~~。杉田取締役から編集長経由で任されてるのに~~。」
ここで言うファションメーカー、楽夢喜夢、
代表取締役社長、夢野喜子。桜華の杉田春樹と同い年である。
中学時代からファッションに目覚め、
その頃に憧れたファッションデザイナー、紺野雅美、
当時、日本でも著名なファッションデザイナーである。この紺野雅美に師事している。
残念ながらこの夢野に両親はおらず、幼少時代から叔母によって育てられていた。
中学時代から紺野に師事して、高校から大学まで紺野の傍で生活していた。
そんな夢野もいつしか紺野の後継者として社会から認められ、
紺野がファッション界の一線から退き、夢野にバトンを渡したと伝えられている。
その際に紺野も全面バックアップで立ち上げた、「楽夢喜夢」が、
「MASAMI KONNO」のブランドと共に、
20代から30代後半に掛けても絶大なファン層を確保していると言われている。
そんな夢野と杉田春樹がある取材で知り合い意気投合。
それが切っ掛けで春樹から亜季が、「やってみない…???」と持ち掛けられたのである。
その結果、過去のブリリアントの取引先でも上位に入っている。
亜季、いろんな仕草をした挙句に、
「ごめん、矢萩さん。この事、もう、夕美子知っているよね。」
電話口で健之、
「あぁ。今、机の上で腕組み状態。」
夕美子に振り返りながら…。
亜季、
「参った~~。どうするよ~~。あ~ん、もう…。」
「とにかく…。」
「とにかく、私も事実確認してみる。この撮影終わったら、すぐ向かうわ。楽夢喜夢に。」
その亜季の声に、
「あぁ~~亜季ちゃん。」
「…ん…???」
「それは…、ちょっと…待って…。」
その健之の声を聞いて後ろの夕美子、
「ふぅ~~。」




