手を握って…。 vol.014 與門の左耳に囁いて…。
「さて…。お出でなすった。お局様の登場~。」
與門の左耳に囁いてその場を立ち去る春樹。
「あら~~。そのままでよろしいですわよ~杉田取締役~~。」
健之を連れ添っての瑞樹。
「いえいえ…。編集長とデスク同士で、様々の話題があろうかと…。」
そして、瑞樹と健之の後ろでゆっくりと近づいてくる乾憲次に、
「ヨッ。」
手を挙げて、その場を離れて乾の肩を抱いて歩きはじめる。
乾憲次、春樹と同じく、取締役のひとりである。
「先日も、紹介したけど、ブリリアントの編集長、與門煌さん。そして、その隣が…。」
瑞樹の声を遮ったような感じで健之、
「新條夕美子デスク。」
瑞樹、
「おやおや…。」
與門、夕美子、
「……。」
「光栄です。こんな素敵な方々の仕事に、仲間入り出来る事、喜んでいるんですよ。今まで、社の方針の仕事しか…出来なかったものですから…。何だか…、こう…、肩の振りが良くなった感じで…。」
リラックスしているような素振りの健之。
與門、そんな健之を見ながら笑顔で…。
夕美子、
「どうぞ…、お手柔らかに…。」
「とんでもない。こちらこそ、勉強…させてもらいます。」
そう言いながら夕美子に右手を差し出す健之。
「あらためて、よろしくお願いします。矢萩健之と申します。」
夕美子、おもむろに右手を差し出して、健之と握手。
そして與門とも握手をする健之。
「それじゃ~。矢萩さん、社長に…また…。」
瑞樹。
「はい。分かりました。」
與門と夕美子に向かって、
「失礼します。」
そしてその後ろ姿に與門、
「ふ~~ん。な~るほどね~~。ゆ~みこ~~???…ふふ…。」
黙って、後ろ姿を見ている夕美子。
「…な…、なによ、その笑い~~???」
「いえいえ…別に~~。さて…。食~べよっか。」
テーブルに振り向き様に與門。
頻りに社長の藤間純に頭を下げている健之。
藤間、
「蜷川編集長~~。これから…楽しみね~矢萩…新デスク。」
「え~~。期待してます~。」
瑞樹。
「藤間社長、ありがとうございます。何かしら、念願叶ったような…。期待に沿えますように、頑張ります。」
テーブルのお皿に料理、
「ふんふん。これも中々のお味。」
夕美子。
「あっ、それはそうと…、倫くん…どうよ、その後…???」
與門。
「さ~てね~~。結婚する気…あるんだか、ないんだか…???」
「やっぱり…姉貴がまだだとね~。中々…。おぅ、これもイケる。」
夕美子、
「おぃ。」
「かかかか。」




