手を握って…。 vol.135 「新條さんで、ふたり目です。」
「夫を数年前に亡くしましてね~~。それからはこの子とず~~っと一緒。」
安祐美。
「…と、言う事は…マンションで…一人暮らしなんですか…長内さん。」
夕美子。
「えぇ…。私たちには…子供…いませんから…。」
和弘、
「あ…、あ~~。」
「元々夫は…金融関係に勤めてまして…。…その影響もあって…、私も夫の仕事に似たような事を家でもやりたくて…始めたんです。」
和弘、
「へぇ~~。ご主人が…、金融関係の…。」
「えぇ…。証券会社に勤めてましてね。」
「えっ!!!」
いきなり夕美子。
「長内さん…。あの…、こんな話すると…失礼かと思いますが…。亡くなったご主人の証券会社って…。…もしかして…。東京…住…。」
「えぇ~。その…東京住永証券です。」
和弘、
「新條さん!!!」
続ける安祐美、
「そこの…外国為替部の部長をしてまして…。」
夕美子、
「外国為替部の部長…。」
「勤続40年…。定年になって…のんびりと暮らしていたんですが…。体調を崩しましてね~。それからは…一気でした。癌を患いまして…。」
「そうでしたか…。」
夕美子、気の毒そうに…。
「夫が亡くなって…。その頃から犬を飼い始めましてね。この子で…2匹目…。まっ、何とか…寂しくなく…生活させて戴いてます。」
安祐美を慰めるような顔をして夕美子と和弘。
「おやおや…。お2人のジョギングの…お邪魔…してしまったようで…。」
恐縮したように安祐美。
今まで抱いていたプードルを安祐美に戻しながら、
「いえいえ…。はい。…っと…。」
プードルの顔を見ながら…。
「コロンと言います。この子の名前。」
にこにこと安祐美。
「へぇ~コロンちゃん。かわいい名前~。」
夕美子もにこにこと…。
「意外と…人見知りする子なんです。でも…。やはり…自分を可愛がってくれる人…分かるんでしょうね~。新條さんで、ふたり目です。こんなに自分の方から…。ふふふ…。」
笑顔で安祐美。
夕美子と和弘、
「へぇ~~。」
「それにしても…物騒な世の中になりましたね~。」
夕美子和弘、
「…ん…???」
「いえね…。夫の前の勤務先…。亡くなられた方…いらっしゃるとか…。」
その安祐美の話に、夕美子と和弘、顔を見合わせて…。
夕美子、
「そう…みたい…ですね~。長内さん…。ご存知なんですか…???」
「えぇ…。まぁ…詳しくは存じませんけど…。テレビなんてまず観ませんから…。知り合いの取引している方からただ、耳にしただけですけど…。」




