手を握って…。 vol.013 「あれ…???どっかで聞いたような……。」
ビールを一口飲んで春樹、
「なにやら、前職で、自分のやりたい企画を何度となく提案したらしいんだけど、その甲斐空しく…、撃沈されたそうで…。それが切っ掛けで、転職を考えたそうな…。」
またまた夕美子から與門の口の中にポン。
「…そんな矢先、ウチの社長とご縁があったと…。」
與門、そんな春樹の話しに、
「ふ~~ん。」
頷いて…。…かと思いきや、
「あれ…???どっかで聞いたような……。」
春樹、
「ん……???何か…???…とにかく。仕事は出来る。それに、人付き合いも良好。」
與門、
「ふ~~ん。」
「そして…。あの…マスク…。」
與門、
「…ん…???」
春樹の顔を見て…。
春樹、
「…ん…???…何か…???」
「スギちゃん…。あんた、その顔で、人のマスク…言える…???」
春樹、
「はっ…???なんで…???」
「韓流俳優ばりの男が~~。」
「はい…???」
そう言いながら、少し考える振りで春樹、にっこりと。
「お褒めに与り…恐縮です。女王陛下。…って、言うかさぁ。煌も、夕美も、うちのチビたち、怒ってるぞ~。最近全然遊びに来ないって。美希ちゃんに会いたい~~って…。」
美希とは與門の一人娘である。小学5年生。
春樹にも小学1年生の帆香と、4歳になったばかりの綾香がいる。
「あ…。はははは…。はぁ~~。」
変顔の與門。
「…って~事は…、遠からずや、木乃美さんも…、怒ってるって…???」
小声で夕美子。
ここで言う木乃美とは、杉田春樹の妻である。
台湾出身で、既に帰化している。
「角、出してね~~。」
春樹。
「あ…。はははは…。はぁ~~。」
與門。
「煌~。変顔…し過ぎ…。まっ、夕美の方は…、懸命に彼氏…探してんじゃないの~と、言い訳は…、しといたけどね~。」
夕美子、
「はぁ~~あ???」
「彼なんて…どうよ…???」
未だ、挨拶周りの途中の瑞樹と健之の方に顔を向けて春樹。
「話によると、まだ…三十路前…。シングルとの事…。」
いきなり頬を赤らめる夕美子、
「…ば…、ばか言わないでよ。…とんでもない。」
膨れっ面をしながら…。
「ふふ…。膨れっ面も…良い顔だね~。夕美~~。ははは。」
「もう~~。スギさ~~ん。ハルキ~~。」
春樹、笑いながら、
「はいはい。まっ、でも、木乃美も、夕美の結婚相手、早く見たいようですけど…。」
「んもう~~、関係ないの。」
「おやおや…。」
與門、
「クッ。」