手を握って…。 vol.132 「矢萩さんに助けられて…ばっかりだよね。私たち…。」
「もしもし、矢萩です。」
スマホから聞こえる健之の声。
「うん。お疲れ様。今、テレビ…見てた。」
夕美子。
「ありがと。テレビ見るように、連絡してくれて…。」
「叔父から…電話…受けてね。それで…。」
「矢萩さん…、いろいろと…ありがと…。ふふ…、矢萩さんに助けられて…ばっかりだよね。私たち…。」
「いえいえ…、そんな事はありませんよ。ただ…、僕にとって、與門さんや夕美子さん。そして洋造さんに高梨君。大切な人たちばかりだから…。」
夕美子、その時、
「えっ…???」
少しだけ途切れた会話…。
健之、
「……。どうか…、しました…???」
夕美子、
「…あっ、いいえ…。うん。ありがと。感謝。」
少しだけ目を潤ませての夕美子、
「うん。じゃ、もう少ししたら…帰社します。由香里たち、もの凄い喜んでる。」
「増版になるかも知れませんね~~。ははは。」
夕美子の耳に信玄、おっきな声で…。
「うるっさい。信玄~~。」
夕美子。
「ははは。その通りかも~~。」
スマホの向こうで健之。
ソファで話を聞いていた由香里、ルイ。顔を見合わせて、
「ん~~???」
警視庁捜査二課、取調室。
若手刑事、早瀬に、
「この女性に…心当たりは…???」
既に拘留されてから一週間が経過していた。
早瀬、その女性の写真を見て、
「いや…。全く…。」
「見覚えが…、ない。」
「えぇ…。」
そして他の海外出張中であった証券マンの2人。
帰国後に即、任意同行され、取り調べの結果、早瀬と同様に、
「全く見覚えが…。」
「與門編集長…、中々…サマになってますよ。」
「だ~って~。與門編集長、元々凄い美人さんですもんね~~。」
健之と若。
「おやおや…お褒めに与り…恐縮です~~。」
與門。
「けけけけ。忙しい編集の仕事から、体、開放されてんだ。少しゃゆっくりすりゃいいのに…。少しでも、動いていないと気が済まない。…だってよ~~。」
洋造。
「ま~~ったく~。あんたらしいよ、與門~~。」
夕美子。
「でも、やっぱり…良いですね~~。店…華やかになった感じ…。」
和弘。
與門、
「ふふ~ん。まっ、少しは…お店の宣伝効果にも…なるかしら~~。」
洋造の家に世話になっているお礼に、與門は2日目から、
洋造が止めるのも聞かずに店の手伝いに出ているのだった。
早瀬が拘留されて頑張っているのに、じっとしていられないと言う事だった。
「拘留期限は凡そ10日。もう少しです。與門さん。」
和弘。
與門、
「うん。」
「何だか、與門編集長、顔…変ったんじゃない…???凄い素敵な顔してる…。」
夕美子の隣で由香里。
與門、
「え~~???そう…???」




