手を握って…。 vol.118 「び~っくりはコッチの方~、ねぇ~ワコウちゃん。」
ガーデンのその席からお互いに席を立つ夕美子と和弘、
「じゃ、行こか。」
「えぇ。」
室内に入り、レジの方には向かわずに笑顔で室内席に歩み寄るふたり。
右手を挙げて笑顔で健之、
「いやはや…びっくり。まさか、こんなところで会うなんて…。はは、新條さん、もしかして…例の…???」
夕美子、目をパチクリさせて、
「び~っくりはコッチの方~、ねぇ~ワコウちゃん。」
和弘の顔に向いて。
和弘、
「えぇ。まさかって…。」
健之の目の前の女性にぺこりとお辞儀をする夕美子と和弘。
健之、
「姉貴、こちら、ブリリアントの編集デスクの新條夕美子さん。そしてとなりが、俺が良く行くお店の…。」
そこまで言って和弘を見てニヤリとして、
「名コックの高梨和弘さん。」
夕美子、
「くっ。ぷふ。…当たってる~~。」
和弘、
「矢萩さん。…そんな…、名コックなんて…。とんでもない。」
両手を前にひらひらと。
瑠唯子、
「これは、これは。」
そう言いながら椅子から立ち上がり、
「弟がいつもお世話になっております。矢萩瑠唯子と申します。」
にっこりと。
夕美子、何かしら健之の左肩に左肘を当てて、
「綺麗なお姉さんね~。ふふ。写真の通り。」
そんな新條と言う女性を見て瑠唯子、
「……。」
「高梨君の…東京見物…???」
健之。
夕美子、
「うん。由香里にあんな事言われたからね~~。」
「ははは。確かに…、凄かったもんね。」
「まっ、でも…ワコウちゃんには美味しいものご馳走になってるから。そのお礼もあるけど…。」
「うん。それも確かに。高梨君の料理は絶品だから…。うん。」
和弘、
「だから~。持ち上げすぎですって~。矢萩さ~ん。」
「しかも…、喧嘩も強いと来てる。」
瑠唯子、
「えっ…???」
「あ~~っと。」
夕美子、健之の右二の腕をさりげなく抓り、サッと引いて…。
健之、
「いっ!!!」
「私たちは…この辺で~。まだ…回るからね~。ワコウちゃん。」
夕美子。
和弘、
「あ~~。はい。」
瑠唯子、
「ふふふ。…気を付けて…。」
夕美子、
「ありがとうございます。」
そして健之に右手を振って、
「じゃね。」
健之、
「うん。気を付けて。」
「ごゆっくり…。」
瑠唯子、
「ありがとうござました。」
レジに向かって歩きながら、壁に掛けられたテレビに顔を向けて…。
「おっきなテレビ~~。」
夕美子。
「ですね~~。」
和弘。
「夕方の…ニュースね~。」
そしてレジに、伝票を差し出して…。
「お願いしま~す。」
自然に耳に届くテレビの音。
「…先程届きましたニュースの続報です。大手証券会社で知られる東京住永証券……の、與門早瀬氏34歳をインサイダー取引規制違反の疑いで……。」
夕美子、
「えっ…。」




