手を握って…。 vol.117 「帰ってこなくていいぞ~って…。」
ランチを東京スカイツリーで摂り、
そこから西に向かい東京見物を続けていた夕美子と和弘。
新宿を楽しみ、そして渋谷に亘り、そこからは歩きながら青山通り。
そしてとあるカフェに落ち着き、しばしコーヒータイム。
「少しは…東京…、目の保養になったでしょ。」
夕美子。
「なんてお礼言って良いか…。」
和弘。夕美子に深々とお辞儀をして、
「ありがとうございます。それに…、申し訳ありません。しっかりと新條さん、御代、払ってくれて。」
頭を掻きながら…。
時計の針は既に夕方5時を回っていた。
「なんだか、貴重なお休みを、僕のせいで、振り回したみたい…。」
照れながら和弘。
「な~に言ってんだか~~。それより何より、またまた美味しい料理をお願い。もぅ~、そればっかりが…楽しくって、嬉しくってね~ワコウちゃん。」
「ありがとうございます。ではでは、腕によりを掛けて、作らないと…。」
「えぇ~~。お願いしますよ~~。あっ。由香里とルイさんって、あれからお店来てるの…???」
その夕美子の声に和弘、
「えぇ…。何度か…。その内、悠宇さんも…来るかも…。」
笑顔でコーヒーを飲みながら…。
「かもね~~ふふ。…今日は…もうちょっと…良いんでしょ、ワコウちゃん…???」
和弘、
「えぇ。逆に洋造さんからは、帰ってこなくていいぞ~って、言われて…。かかかか。」
夕美子、
「はぁ~~あ~~???」
そして、笑いながら、
「何言ってんだか~~あいつは~~。」
和弘、
「くくくく…。」
その時、
「あれ…???」
ちらりと、夕美子の左肩の向こう、和弘の目に留まった窓の向こうの顔。
夕美子、
「…ん…???どしたの…???」
和弘、
「えっ、あっ。」
首を傾げながらも、
「もし…か…して…???」
夕美子、和弘の目線のままに左後ろに体を捻じ曲げ…。
「へっ…???」
そしていきなり自分の目に飛び込んで来たひとつの顔。
「わっ。」
ガーデンの席と、窓の内側の室内のその席と、
それほど距離と言っても離れてはいない。
左斜めの少し離れた場所で体を捩じった女性が視野の片隅に。
その姿を見た時に、こちらも、
「うっ。」
そしていきなり口をすぼめて…。
その顔の前にいた女性、
「何…、どしたの…???」
既にガーデンのふたりは気付いて笑顔で手を振っている。
和弘、夕美子、ふたり同時に、
「…ま…さ…か…ね~~。偶然…ありすぎでしょ。かかかか。」
室内席で、こちらも笑顔で手を振る。
目の前の女性も首を右後ろに捩じり…、
「…ん…???あの…人…たち…???」
「俺の…知り合い。ブリリアントの編集デスクと、コックさん。ははは。」
健之。
瑠唯子、
「へぇ~~~。」




