手を握って…。 vol.010 「つまりは…、エリートって…。」
ベルモンドのカウンターでワインを飲みながら與門、
「矢萩健之。名門、青峰大学、経営学部卒。その後、帝日新聞社を経て、日東文芸社に紹介され転職、そして1年後にはいきなりそこの編集長に抜擢。何を思ったかは知らないけど、そこの編集長も3年で辞めている。」
そんな與門を見ながらカクテルを作っている洋造。
こちらはビールのグラスの淵に人差し指を当てている夕美子。
「そんな彼が、いきなり軌道を変えてメンズファッションの出版会社に…。けれども何の因果かは分からないけど、ウチの社長に、見初められたと…。」
そんな與門の話を聞いて夕美子、
「ふ~~ん。な~るほどね~~。つまりは…、エリートって…、ことか…。」
「そう…、みたい…。」
「夕美子~~。」
「ん~~???」
「大丈夫~~???」
その声に、洋造、
「……。」
夕美子、與門と洋造を交互に見ながら、
「な…、な~によ~。なになに、ふたりして~~。」
アパートの部屋のドアを開けて、
「うわぁ~~お~~。びっくり~~。かかか…、友紀ちゃ~ん。かかか。…ん…???もぅ~帰り~~???」
「あは。夕美さ~ん。お邪魔してました~~。わお。いきなり入ってきたから、こっちも驚いた…はは。」
倫洋の恋人、町田友紀である。
「あっ、姉ちゃん、お帰り~~。」
倫洋。
「何、友紀ちゃん、泊まってけば~~。」
倫洋、
「何、バカな事、言ってっかな~~。」
そんな倫洋に、
「何バカな事~~???その言葉、そっくり返すよ~~。ちゃ~んと、守ってあげなきゃ~~。ねぇ~~友紀ちゃん。」
ドアの外に出てクスクスと笑いながら、
「じゃ、私、おやすみなさ~い。」
「倫~~。ほい。送ってあげなさ~い。」
「あ~~、良い、良い、駅…すぐそこだから…。へへへ。」
「ダメ。男は甘やかすと、図に乗るからね~~。」
「わ~った、わ~った。ほい、友紀。行くよ。」
友紀、あらたまって、
「…じゃ…、へへ。お願い…。」
「あっ、姉ちゃん、ご飯、テーブルの上~~。」
「おっ。ありがと。」
「来週は姉ちゃんの番ね~~。」
「おぅ、分かってる。行っといで~~。」
歩きながら友紀、
「ふふ…、さすがに夕美さんだ。凄いバイタリティだね。」
「な~に言ってる~~。そのバイタリティのお蔭で、全く色気なし。男、寄り付かねぇし…。」
倫洋。
「そ~んな事ないよ~。私より綺麗~~。」
「はは。お世辞でも、嬉しいよ。まっ、仕事は出来る…かな~~。」




