手を握って…。 vol.001 夕美子、倫洋共に、「いただきます。」
フライパンから目玉焼きを掬ってお皿に、
「ホイ。」
そしてハムを乗せて、オーブンレンジのピーピーの音。
「はいさ~~。これで良し。」
さささとフライパンを洗って…、
「で~きたっと~。」
倫洋。
そんなキッチンに、
「おはよ~~。おんや…。さすが倫くん。旨そうに出来てますね~。」
夕美子。
「あいよ~。食べようぜ~~。」
そして、夕美子、倫洋共に、
「いただきます。」
「倫~~。どう…???仕事…忙し…???」
食べながら夕美子。
「…ってか…姉ちゃん。この時期に…忙しいって言う事態…、おかしいでしょ。」
その倫洋の声に、
「あっ、そっか…、卒業シーズン、そして新社会人の…シーズンだもんね~。」
くすくすと笑いながら夕美子。
「それから…転勤族…。引っ越し業界は…正にてんやわんやの…、時期だっての。」
そして、
「そういう姉ちゃんの方は…???」
「こちらは…、なん~とか、ようやく…顔が…売れ始めて来たかな~~。…な~んてね。」
「良く言うよ~~。立ち上げ当初から、バカ売れの出版会社が~~。」
その倫洋の声に夕美子、
「そ…お…???ニシ…。」
「ねね…、姉ちゃん。…もしかして…。誰か…???」
「な~によ~それ~~。」
「だって~~。もう…既に三十路…、過ぎてんだから…。」
「う・る・さい。…そういうあんたはどうなのさ。とっとと結婚しなさい。いつまでも友紀ちゃん待たせないで。」
「…ってね~~。姉貴にいい人がいないのに、なんで弟の俺が先に結婚できんのさ。」
「だ~か~ら~。う・るっ・さい。…ん…???電話…???與門…???…はい。おっはよ。」
電話の相手は夕美子の勤務する女性誌出版会社「桜華」
そのブランド雑誌「brilliant」の編集長、與門煌である。
「ごめん、夕美子。今すぐ新宿に向かってくれない???」
「はい…???何で新宿…???」
「明後日のアポを取っていたデザイナーの牧田敦子、急に今日の昼前の便でパリに発つって。今、彼女のマネージャーから連絡が入ったの。」
「え――――――っ!!!!」
「本当は、私が行くところな…。」
「ま~た、騒ぎの虫が出たってか~~~。あのデザイナー、たま~~にやらかすもんね~~。」
「お願い夕美子~~。」