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優香さんの叔父さん

 そうこうしているうちに、団地に着いた。

てっきり、すぐ部屋に向かうと思っていたが連れてこられたのは管理人室と書いてある部屋だった。戸惑っている私をよそに優香さんがコンコンコンとノックをした。はぁいと気の抜けた返事が返ってくる。そしてガチャッと扉が少し開いた。

「どちら様ですか」

そう言って40代半ばくらいの男性が顔を覗かせる。

「こんばんは、叔父さん」

そう優香さんが言うと

「優香ちゃんじゃないか。こんばんは。こんな時間にどうしたんだい?」

と、優しい声で聞いてきた。

「ちょっと話したいことがあって」

優香さんはそう言って私の方を向いた。

挨拶をしなければと思い

「こんばんは」

と言うと

「こんばんは」

と叔父さんと呼ばれている人は笑顔で挨拶を返してくれる。そして、

「立ち話も何だから入って」

と言って扉を開けてくれた。

お邪魔しますと二人揃って中に入る。

「コーヒーと紅茶どっちがいいかな?」

と私に聞いてきたので

「紅茶でお願いします」

そう答えると、わかったよと言い用意を始めた。少しして、私と優香さんの前に飲み物の入ったカップを置きテーブルを挟んで向かい側に座った。

「それで話って何かな?」

と聞いてきた。

「この子をうちで預かることになったから一応報告をしようと思ってので」

そう優香さんが答える。

「そちらの女の子を?」

うんと優香さんが頷く。

「未成年に手を出すのは感心しないなぁ」

とからかった様子で言っている。

そんなんじゃないよと優香さんが反論しているが軽く流している。そして、何か考えている様子だった。

少ししてそうだねと言い口を開いた。

「色々と言いたいことはあるけど、まず自己紹介をしてもいいかな?」

と私の方を見ながら言ってきた。

こくりと、頷く。

「僕は佐藤裕司と言います。歳は48です。で、優香ちゃんの叔父です。裕司さんって呼んでくれると嬉しいかな。おじさんでもいいんだけどね。とりあえず、よろしくね」

とにこやかに自己紹介をしてくれた。自己紹介の仕方が優香さんに似てるなと思った。

「えっと、池田鈴です。15です。よろしくお願いします」

「スズちゃんかか可愛らしい名前だね」

そう言うと

「リンちゃんって呼んであげて」

と優香さんが、口を挟んできた。

そうなのかい?と目が訴えかけてきてるので頷くとわかったよと言ってくれる。

「リンちゃんに質問なんだけど優香ちゃんと一緒に住むの?」

「その予定です」

素直にそう答えると

「そうかぁ」

と何か言いたげな様子だった。そして、

「一緒に住んでみて合わなかったらすぐに言ってね。部屋は空いてるからすぐ貸せるよ」

と笑顔で言ってくれる。

裕司さんこの人も優香さんと同じだ。

事情も説明してないのに私に親切にしてくれる。

「事情とか聞かないのに何でそんなに親切にしてくれるんですか?」

優香さんのときと同様疑問に思ったことを聞いてみる。

「親切にするのに理由はいらないんじゃないかな?それと事情については話したくないことかもしれないから聞かないかな」

と言われた。驚いてしまって何も言えなくなってしまった。そんな私に対して

「リンちゃんは事情を説明するべきだと思っているみたいだね。それはなぜかな?」

そう聞いてくる。

「なぜってそれが道理じゃないですか?助けてもらうには最低限事情を説明するべきだと思ったので」

そう答えると、優香さんと裕司さんが二人してため息をついた。変なことを言ってしまったかなと思い心配していると

「その歳で道理を考えるんだ。リンちゃんは真面目なんだね」

と褒められた。いきなりそんなことを言われたので戸惑っていると、

「何となく事情は理解できたかな」

と言っている。どういうことなんだろうと思っていると

「叔父さんは管理人やる前はカウンセラーやってたから私なんか比にならないくらい色々な人と話してるからちょっとしたことでも相手の事情が推察できるんだよ」

と優香さんが説明してくれた。カウンセラーの人ってすごいなと感心していると、裕司さんが優香さんに対し

「未成年を預かるんだからきちんとしないとだよ」

と真剣な表情で言っている。

「わかってるよ」

優香さんも真面目な顔でそう返した。それならいいんだと言い、裕司さんの表情が笑顔に戻った。


 そうしてしばらく話をしたあと

「二人とも夕飯は食べたのかい?」

と裕司さんが聞いてきた。

「食べてないよ」

と優香さんが答えると

「じゃあピザでも頼もうか。今日は僕のおごりだよ」

と笑っている。そしてピザを頼み、3人で食べた。そろそろ21時になろうとしていた。いい時間になったので今日はお開きにしようということになった。

「リンちゃん今日はありがとうね。話せて楽しかったよ」

「私も楽しかったです」

そういうと裕司さんは笑顔を浮かべた。

「一応言っておくんだけど優香ちゃんはリンちゃんが思っているよりポンコツだから幻滅しないであげてね」

と言われた。それを聞いた優香さんが、失礼だよと少し怒っている。その二人の様子を見て私は微笑んだ。

お読みいただきありがとうございます!

ゆっくり更新していきます!

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