告白
優香さんをずっと立たせているのも悪いと思ったので隣に座ってもらった。少しして
「リンちゃん少し話さない?」
と優香さんに言われたので、いいですよと答え、とりとめのない話をした。そうして、話に一区切りついたところで
「リンちゃん、これから私達別々に暮らさない?」
と急に言われた。え?今優香さんはなんて言った?言われた言葉が理解できなかった。否、理解したくなかった。
「すみません。聞き取れなかったのでもう一度言ってもらってもいいですか?」
この距離で聞き取れないはずないのだが、わかりたくなくて、聞き間違いであって欲しくてついそう聞いてしまう。
「私達別で暮らしたほうがいいと思うの」
やはり聞き間違いではなかった。さっきとは違い提案ではなく優香さんの意見を言ってくる。
「急ですね。何かあったんですか?」
とできるだけ平静を装いそう尋ねてみる。すると
「お互いにこれ以上一緒にいると辛いかもしれないから」
そう優香さんは言う。その瞬間捨てられると思った。そして、
「私、優香さんの嫌がることしてましたか? 何か間違えましたか? なんでですか?」
と質問攻めにしてしまった。
「違うのリンちゃんは何もしてないの」
優しい声でそう言ってくれている。だが、
「じゃあなんで!」
と、私はつい大きい声を出してしまう。優香さんがびっくりしている。しまったと思い口を開こうとすると優香さんが抱きしめてきた。そして、
「リンちゃんあのね」
と、ゆっくりと言い
「私ね、リンちゃんのことほんとに好きになっちゃったの」
そう言われた。え、今好きって言われたよね。好きってわざわざ言うってことはライクじゃなくてラブのほうだよね。じゃあなんで優香さんは別々に暮らしたほうがいいって言ってきたのだろうか。そんな疑問が浮かび上がり聞こうとする前に、
「さっきはお互いに辛いって言ったけど、本当は私が距離感を間違えてリンちゃんを傷つけたくないの」
と優香さんは理由を話してくれる。そうだったんだ。優香さんが私を傷つけることはしない気がするのだが、今はそんなことよりも優香さんが私のことを好きと言ってくれたこと、そして私のことを考えてくれていたことがとても嬉しい。しかし、それならば別々に暮らそうって言うのではなく、素直に好きと言ってくれればいいのにとも思った。そう思ったのだがすぐに、それはあまりにも卑怯だと気づいた。だって優香さんは不安だったはずだ。私に言ったら私が困ったり最悪距離を取られるかもしれないと思ったはずだ。私だって言ったほうがいいか言わないほうがいいかをさっきまで悩んでいたのに、優香さんにだけ言ってくれというのはズルいだろう。優香さんは勇気を出して言ってくれたのだ。であれば、私も言わなくちゃ。ちゃんと優香さんに自分の気持ちを伝えないといけない。そう思い口を開く。
「あの、優香さん、私」
言葉が詰まる。それに緊張して声が震える。ここで言わないと優香さんと一緒に住めなくなってしまう。それだけは何があっても嫌だ。一度抱きしめてくれている優香さんを引き剥がし
「私、優香さんのことが好きです。友達とかそういうのではなく恋愛的に好きです! できることならお付き合いしたいです!」
と優香さんの目を見て誤解の余地が無いようにはっきりと伝える。最後の一文はつい勢いで言ってしまった。だが、嘘ではない。好きだし付き合えるのであれば付き合いたい。優香さんは固まってしまって何も言ってこない。そして口を開いたと思ったら
「ホントニ?」
と何故かカタコトになっている。その様子につい笑ってしまった。そして、そのおかげで緊張がどこかに行った気がする。
「なんでカトコトになってるんですか?」
と笑いながら聞くと
「だって、びっくりしたから」
と言われた。
「えー、そんなにびっくりします?」
と聞くと
「するよ! だってこっちは玉砕覚悟でリンちゃんに思いを伝えたんだよ」
と若干涙目になりながらそう言われた。そうだよね。やっぱり優香さんは覚悟して言ってくれたんだよね。嬉しいな。
「ありがとうございます」
そう言って優香さんに抱きついた。すると優香さんも私の背に手を回し抱きしめてくれる。本当に落ち着くなと思っていると
「はじめてだね」
と優香さんが言った。何のことについて言ってるのか分からなかったので
「なにがですか?」
と聞いてみると
「リンちゃんのほうから抱きしめてくれるの」
そう答えが帰ってきた。言われてみればたしかにそんな気がする。しかし、改めてそう言われると何だか気恥ずかしいので
「そうでしたっけ?」
とあえてとぼけた。
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