優香さんの過去
次の日玄関のチャイムの音で目が覚めた。
優香さんが出たらしい。
「リンちゃん起きて行くよ」
そう声をかけられた。
「どこに行くんですか?」
まだ寝ぼけた状態でそう聞くと
「ベッド買いに行くよ」
ベット?頭が働かないのでとりあえず着替えた。エレベーターを降り団地の駐車場に行くと裕司さんが待っていた。
「おはよう、二人とも」
そう声をかけてくる。
「おはようございます」
あくびをこらえながらそう返す。
「リンちゃんはまだ眠そうだね」
と言い優香さんと一緒に笑っている。
二人は笑い方が似ているなと思った。
ショッピングモールについてすぐに私のベッドを見に行った。好きなものを選んでいいとは言われたがいまいちどれがいいのかわからなかった。微妙な顔をしてしまっていたのだろう優香さんが使っているものに近いものを選んでくれた。裕司さんが心機一転ということでベッドを買ってくれた。
「ありがとうございます」
心の底からそう言うと
「これから頑張ってね」
と応援してくれる。ほんとに優しい人だなと感じた。
その後、フードコートで食事したあと優香さんが一人で見てきたいものがあるというので裕司さんと二人きりになってしまった。少し話したりしてはいたがまだ若干気まずさを感じる。
でも、いい機会かもしれない。
「あの裕司さんに聞きたいことがあるんですけど」
そう聞くと
「答えられることなら答えるよ」
と言ってくれる。
「優香さんのことについてなんですけど」
そう言うと、少し困った顔をしている。
「優香ちゃんのことかぁ。何が聞きたい?」
「昔のことについてなんですけど。やっぱり優香さんに直接聞いたほうがいいですかね?」
勝手に人の昔を聞くのはやっぱり良くないかもしれないと思いそう聞いてみると、
「まぁ、そうだね。優香ちゃんならそのうち話してくれると思うし。あ、でも荒れてたときの話はしないだろうからその話だけしてもいいかもね」
と裕司さんが一人で考えている。優香さんが荒れているのが想像できなかったのでかなり興味がある。
「優香さんって荒れてたんですか?」
こう聞けば言ってくれるだろうと思った。
「いい聞き方をするね」
私の思惑がわかっているのだろうそう言われてしまった。そして、
「優香ちゃんが高校生の時だから、ちょうどリンちゃんと同じ年くらいのときかな」
と言って話を始めてくれた。
優香さんが高校に進学してすぐに両親の海外転勤が決まってしまったらしい。優香さんは高校受験をかなり頑張っていたそうで一緒に海外に行くという選択肢はなかった。そして、大喧嘩になり、家出もしたらしい。
その後、優香さんが折れなかったので裕司さんが管理するマンションに住むことが条件で一人で日本に残ることが許された。
「僕も困ったんだけどね。いきなり面倒を見てくれって言われてさ」
と裕司さんは当時のことを懐かしそうに思い出している。そして
「その後が大変だったんだよ」
と言いまた話を続けた。
髪を染めて帰ってきたときは何事かと思ったと笑っている。髪を染めるのはまだいいが、家に帰ってくるのも遅くなり、警察に補導されることも多くほんとに大変だった。そんなことが多かったので少し話し合いをした。一応学校の決まりでもあったから髪の色も治してほしいと伝えたが、髪の色はどうにもならなかった。あまりに縛りすぎるのも返って反発される要因なのでそれ以降触れなかったのだという。それが良かったのかほんとに心配しているのが伝わったのか補導されることはなくなったらしい。
そのまま大学生になったらまた荒れるかなと思ったが予想と反してかなり落ち着いてくれたので助かったと言っている。
「大学生のときに優香ちゃんの両親が日本に帰ってきて今リンちゃんと暮らしてる部屋で一緒に暮らしてたよ。ま、半年くらいだったし今また海外転勤になってるしね」
と言い笑っている。その後のことが気になって聞こうとしたら
「あとは優香ちゃんに聞いたらいいよ」
と先に言われてしまった。そしてすぐに
「お待たせ!」
と優香さんが声をかけてきた。
その後ショッピングモールから帰り、ベッドや棚などを置き無事私の部屋が完成した。
私は一切お金を出していないのに立派な部屋ができてなんだか申し訳なく思ったがそれ以上に二人に対して感謝の気持が強かった。そして、新しく買ったベッドの上でゆっくりしていると、扉がノックされ
「今いい?」
と優香さんが声をかけてきた。
「いいですよ」
と返事をすると、お邪魔しますといい部屋に入って来た。
「どうしたんですか?」
と聞いてみると
「叔父さんから私の昔の話聞いた?」
と聞かれた。しらばっくれるべきか素直に答えるべきか考えていると
「やっぱり聞いたんだ」
とジト目をされてしまった。
「すみません、ちょっと、いやかなり気になっていたので」
と答えると
「いいけどね」
と言ってくれる。どんな話聞いたのと言われたので、高校生のときの話を聞いたというと
「忘れて」
と言われてしまう。
「そういえばその後のことは優香さんに直接聞いてって言われたんですけど」
と裕司さんが言っていたことをそのまま優香さんに言うと、いいよと言ってくれた。
「その後の話だと多分カウンセラーを目指しはじめた理由とかかな」
と言って話を始めてくれる。
大学生になった優香さんは裕司さんの言っていた通りかなり落ち着いたことで色々な人との関わりが増え沢山の人の相談にのることが多く、大変だったと言っている。きっかけはそれだったらしい。
「叔父さんがカウンセラーやってるの知ってたから仕事してるところ見せてくれって言って見せてもらってたの。」
でも、何回か断られたけどずっと言ってたら渋々了承してくれたんだよ。と笑っている。
余談だけど裕司さんは昔は怖かったんだよと言っている。すごく優しいのであまり想像ができなかった。そして、しばらく優香さんと裕司さんの話をしたあと
「で、叔父さんの仕事姿見てて私も人の相談に乗って納得する答えを出して上げることができたらいいなって思って勉強始めて今に至るって感じかな」
と話を締めくくる。優香さんはまず色々な人と関わり、次に裕司さんの仕事姿がきっかけでカウンセラーを目指したんだ。そして裕司さんはそれを知った上で自分の口から言いたくなかったんだなと察した。
今日1日で自室が完成し優香さんの過去について知れし、裕司さんともお話できた。とても充実した1日だったので良かったなと思い新品のベッドで眠りについた。
お読みいただきありがとうございます!
次に活かしたいので感想などございましたらぜひお願いします!




